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短編
保母と幼児達
匿名
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保母と幼児達

匿名
2016年11月23日
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関東地方周辺のある河川上流にての話

その川の上流は片側が切り立った崖がそそりたち、もう一方の川岸はアスファルトを敷いた遊歩道になっている。散策を開始したのは午後に入ってからだ。

流れに沿ってひたすら上流にまで遡る道で、二時間ほど歩いた地点で少しもめた。

四人で来ていたのだが、田舎育ちのおれは「きた道を引き返すのにもまた二時間かかる。

こういう場所は陽が落ちるのが早い。今引き返さないと、日の光があるうちに入口の地点まで戻れない。」そう言った。

しかし、東京育ちで平素、山にも谷にも行かない同行者達は、街灯のない所で陽が落ちるとどうなるのか、全く想像できないようだった。

引き返すにしても別のルートから帰ろう、せっかく来たのだからもう少し

先へ行こうなどと言う。

どうにも理解してくれないので踵をかえして下流方向へと歩いた。全員揃ってここで日没を迎えたら、にっちもさっちもいかなくなる。

ならば一人だけでも遊歩道の入口に戻っておけば、車で残った者を迎えに行けると考えた。

陽が傾きかけると山の渓流はすぐに薄暗くなりだした。切迫感に駆られて、おれは競歩ほどの速さで急いだ。

谷はどんどん暗くなっていく。

しまいには駆け出した。

集落に着く前に闇のなかで歩けなくなるのでは。焦燥感がつのる。

遊歩道におれ以外の観光客の姿はもうない。

心細く焦る耳に歌が聞こえてきた。

幼い子の合唱する声だ。

夕焼けこやけで日が暮れて~やぁまのお寺の鐘がなる~

ぎょっとして背後を見たら、五十才代の保母さんと体操帽とスモッグを来た幼児達がいた。保母さんと目があった。

おれはずっと一本道をここまで歩いてきた。その間、一人だった。それに

おれは走っていた。

保母と園児たちは、俺が遊歩道の入口を出たすぐ後に歌と共に遊歩道から出てきた。

戸惑っていると、連れがおれの後ろから息をいらせて駆け寄ってきた。

かえりの車の中、幼稚園児いたよな? 歌うたってたよな?と、聞くと、三人とも「居なかった」と答えた。そういえば現れた時同様に忽然と居なくなっていた。

幽霊を目撃したというより、異なる日付けに、同じ場所の同じ時間帯にいた者同士があり得ない鉢合わせをしたような感じだ。なぜあの保母さんはおれを見て、おれはあちらを見ることが出来たのだろう。

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