
短編
ラジオパーソナリティ
匿名 2日前
chat_bubble 1
2,576 views
地方のラジオ局でディレクタをしていた、20年ほど前の話。
放送開始から私が担当していたとある番組の当時20代だったフリーのパーソナリティの女の子(仮に純とします)が、自ら命を絶った。
純には婚約者がいたが、その婚約者と何かトラブルがあり、本業のOLとして勤めていた会社の倉庫で発作的に首を吊って息を引き取ったとのことだった。
私とは歳が近くウマが合ったので特に仲の良い娘だったし、パーソナリティとしてもこれから実力をつけて人気も出て…という時だったので、俺にとってもショックは大きかった。
その局内でも一同悲嘆に暮れたが、変化の激しい業界のこと、純のことを憶えている者も時が経つにつれ少なくなり、純を知らぬ関係者も次第に増えていった。
あれは純がこの世を去ってから2年か3年経ったある日、純のことを全く知らないパーソナリティが担当していたある番組に、占い師という女性がゲストで出演した。番組は無事に終了したが、その番組のパーソナリティが私に訊ねた。
「スタジオに、ジュンかジュンコという若い女性が来ている」と占い師が言っているが、心当たりはないか、と。
私は思い起こすまでもなく直感した。あの娘だと。
その占い師はもちろん占い師をゲストに呼んだパーソナリティすら純のことは知る由もない。
まして、純が命を絶ったことは番組ではもちろん局内でも一部の関係者を除いて公表してもいない(そこまで名が知れていたわけでもなかったので)。
それに、この占い師がそういう虚言をする意味もないことを考えると、私には十分に信憑性のある発言だった。
占い師によれば、ジュンに悪意はなく、その場を懐かしんで時折来ているようだとのこと。
その話を聞き、私は迂闊にも目の前がぼやけた。
霊感0の私には何かを見聞きしたり感じるべくもなかったが、純が昔を懐かしんで訪れてきているのだとすれば、突然の別れを経験しなければならなかった私としても、少し安堵できた思いがした。
以前から霊的な体験はほぼ皆無だが、霊魂の存在は信じていた私にとって、霊の存在を感じた、数少ない体験である。
後日談:
- ちなみに純は脱ぎはしなかったもののグラビアタレントもしていて、B級グラビア雑誌の表紙を飾るくらいのルックスがあり、童顔とそれに似合わないGカップ巨乳がウリだった。 そういう意味でも残念でならない。
この怖い話はどうでしたか?
chat_bubble コメント(1件)
- 一人称を急に変えるなモンチ