
中編
霊の通り道
匿名 2018年8月30日
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これは、数年前に私が体験した出来事です。
紙を加工する工場にいたのですが、とある日、急に転勤になり、在庫を扱う倉庫勤務になりました。
ま、転勤って言っても元々勤めてた工場から車で1時間くらいの距離で、工場から毎日2回ほどトラックでいつも在庫をしてる製品を運んでくるようなとこでした。
ただ、倉庫とは言っても名ばかりで、
実際は、うちの会社が昔使っていた工場をそのまま倉庫にしただけだったので、
あちこち壁に穴が空いてたり、掃除の行き届いてない、古い廃工場って感じでした。
倉庫の形は、長方形の建物が2つくっついたような英字のL字型をしており、
書き終わりの短い部分の先端が出入り口で、書き始めの長い部分の先端が倉庫の1番奥って感じでした。
道は真ん中に一本のみで、左右に製品が積まれてるような状態でした。
電気をつける場所が、古いせいか二ヶ所ありました。長い建物の方は中央部分に、短い建物の出入り口の部分にありました。
短い建物のについてる電気は、短い建物のみで、長い建物の方に電気をつけに行くには、夜だと多少暗闇を進むことになります。
ま、そんなこんなで倉庫の方に通勤するようになり、引き継ぎもあるので、僕の代わりに工場に戻ることになったやつ出るって話だなら気をつけろよ」なんて言われました。
正直、今まで生きてきてそんなものを見たこともなければ感じたこともない。
テレビ等で紹介されてるのもきっとヤラセか、錯覚だろうと思っていました。
そして転勤から1年くらいたち仕事にもようやく慣れた頃でした。
この倉庫は、二人で回していて、朝から出勤する日勤と、昼から出勤する中夜勤とに分かれていました。
ちょうどその日は、私が中夜勤でした。
その日は、いつもより明らかに仕事量が多く、日勤に残業してもらうほどでした。
その後、日勤も帰り、やっと仕事の終着点が見えはじめたころ、すでに22時を過ぎていました(中夜勤の定時は21時)。
終着点が見始めたので「よし、ラストスパートだ。」と思い、いつも以上に気合を入れて仕事をしました。
そして、ようやく仕事が終わり、「ふぅー終わったぁ〜」と時計を見ると0時近くでした。
疲れたし、もうとっと帰ろうと、急いで電気を消し、小走りで出口に向かいました。
出口で、更に電気を消し、シャッターを閉めて倉庫の施錠しました。
そして事務所につくと、すかさず帰宅のタイムカードを押そうとしました。
すると、ファクスに一枚の紙が見えました。
追加出庫の連絡でした。
いつもならトイレのときとかついでに見にくるのですが、今日は、忙しかったので追加のファクスがきてるか確認ができなかったのです。
「もう施錠しちゃったのに…しかもよりによって奥の商品だよ…」と思いながらも、ぶつぶつ言っても仕方ないと思い、また倉庫に向かいました。
シャッターをあけて電気をつけて歩き出しだしました。
紙を見ながら歩いていたので、あまり前を見てなくて、ちょうど長い方の建物に曲がる際に、棚の商品にぶつかり、落としてしまいました。
「なんだよ…」といいながら直してると、
建物の1番奥が何か光ったような気がしました。
建物の奥は、一箇所だけ向かい合わせにガラス張りになってるとこがあるので、きっと車の光か何か入ったんだろうと思い、そのまま進み続けました。
するともうすぐ電気をつける場所につくと思った瞬間、今度は、明らかに奥で青白く光った人の形をしたものが左から右へとゆったり横切りました。
私は、言葉を失い、立ち止まりました。
1分くらいたったでしょうか…
するとまた左からまた出てくるような気配を感じました。
わたしは、一目散に出口まで逃げ出しました。
電気を消さずに、施錠して、すぐに帰りました。帰ってから中々怖くて寝付けなかったのを覚えてます。
追加の出庫は次の日の朝、日勤に出し忘れたと連絡をして、なんとかことなきを得ました。
しかし、あの霊のようなものは、どうやら、俺と代わりに転勤したやつもその事実を知っていました。
そいつから聞いた話ですが、
前によくうちの倉庫にきていた運転手で霊感が強い人がいたらしく、
その人から聞いた話ですが、
どうやら合わせ窓の横に昔、井戸があって、そこから霊の通り道になっていると言っていたそうです。
それから数年経ち、
今では、その倉庫は使われていません。
建物だけが残っています。
また誰かが通り道に使っているかもしれません…
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