
中編
あるクレーム
匿名 2日前
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した。
「●●さんですね?うちのに教材を売りつけましたよね?」
「はい」
「昨日、教材が届いてびっくりしたんですが、どういうつもりでこんなものを売りつけたんですか?」
「いえ、お母さんが、お子さんにちょうど教材を検討されてたと仰っていましたので・・」
「・・・・・・・・」
「あの・・・」
「・・・・・●●さん」
お父さんの声がにわかに沈みました。
そしてお父さんは苦しそうに、こう言ったのです。
「うちには、子供なんていないんですよ・・」
私は咄嗟に言葉が出ませんでした。
お父さんは続けました。
「ですので・・、申し訳ないのですが、この商品、引き取りに来てもらえませんか」
私は「はい」とだけ答えるのが精一杯でした。
翌日。
私は約束通りそのお宅へ再訪しました。
お母さんが出てきたらどうしようと、内心緊張していました。
どんな顔して挨拶したらよいのか・・
しかしインターフォンを押しても誰も出てきません。
おかしいなと思い、何度も押しますが、やはり人の気配がありません。
試しにドアノブに手をかけてみると、施錠されておらず、ドアがぎぎっと開きました。
「こんにちは、●●です」
呼びかけながら室内に目をやって、私は息をのみました。
もぬけの殻だったのです。
ついこの間まであった家財道具がまるでなくなっていて、完全な空き家になっていたのです。
呆気にとられる私の目の前に、未開封の教材セットだけが、ポツンと置かれていました。
底知れぬ恐怖を感じ、私はあわてて教材を手に取り、逃げるようにその場を後にしました。
心霊とは違いますが、あの時は本当に言いようのない恐怖心にとらわれました。
あのお母さんの顔とあの家の光景。
20年近く経った今でも忘れることができません。
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