
中編
かるさん
ノブ 6時間前
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私には双子の姉がいます。
これは私達が10歳の頃の冬休みに、家族揃って父の実家へ泊まりに行った時の話です。
そこへ行くのは本当に久しぶりで、年の近い親戚や祖父母に会える事がとても楽しみだったのですが、まさかあんな怖い事が起こるだなんて思いもしませんでした。
父の実家は山口県にあり、周りはぽつんぽつんと民家がある位で昼間でもあまり人通りはありません。
それでも子供にとっては普段行かない場所というのは冒険心に満ち溢れており、着いて早々姉と共に遊びに出て行きました。
姉と懐かしいねなんて話しながら田んぼに挟まれた1本道を歩いていると、向こうから足を引きずった女の子が歩いてくるのが見えました。
道幅がとても狭いので、その女の子が先に通ってから私達も先へ進もうと思い立ち止まりましたが、不意に姉が私を強く引っ張り、元来た道を戻ろうとしたのです。
どうしたのか聞いても
「いいから、急いで帰るよ!」
としか言わず、そのまま私は父の実家に帰りました。
玄関に着くと祖母が迎えに出てくれましたが、顔面蒼白な姉を見てとても驚き、何があったのか聞いてきました。
すると姉は
「そこの1本道でA子ちゃんを見たけどA子ちゃんじゃなかった!」
と泣き出しました。
A子ちゃんとは親戚の子で私達より3歳年上の女の子です。以前は山口に来た時はよく遊んでいたのですが、あの時見た人は腰まで伸びた髪もぐちゃぐちゃで服も泥で汚れており、面影は全くありませんでした。
姉の話しを詳しく聞いた所、足を引きずっていた女の子はA子ちゃんに似ていますが違う化け物で、本物のA子ちゃんはその化け物の引きずっている方の足を掴んで引きずられていたと言うのです。
姉の話しを聞いた祖母は
「かるさんが出たんか」
と言い、部屋の中へ急いで入ってしまいました。
その後は両親や祖母に「何もないから心配するな」と言われ、無理やり寝かしつけられました。
そしてまだ数泊する予定だったのを切り上げて、翌朝早くに自宅に戻る事となったのです。
あの時の事は暫く親に聞いても何も答えてくれませんでしたが、先日やっと「もう大人になったし」と教えてもらえました。
どうやら「かるさん」というのは方言で「借りる」と言うらしく、あの地域では昔から、時々亡くなった人間が生きている人間の体を借りて歩き回るという事があるのだそうです。
誰彼構わず借りる訳ではなく、亡くなった人と近しい人の体を借り
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