
長編
死に別れた舞妓はん
ぷー 2日前
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「だいぶ前からいるよ」
一瞬なんのことかわかりませんでしたが、その友人がチラリと後ろの布団入れの方に目を向けるような合図をしました
「やっぱり…いるんだ…」
いることが確定したせいか、段々形が分かってきました
どうやら束ねられたカーテンの影で正座をしており、がっくりた首を前に倒しているようでした
「どうするの?」
と霊感の強い友人に聞くと
「知らないふりで」と言われました
その通りにするために私たちはまた他愛もない日常の恋愛や噂話などを続けました
少し気持ちも落ち着いた頃
右の手首が痛いなと感じました
痛みが少しずつ強くなり、さすり続けないと気が紛れないくらいです
また更に痛みは強くなり、さするだけではなく、体を揺するくらいになりました
「大丈夫?」
友人が心配して聞きました
「かなり痛いな。なんだろ?」
そのうち私は椅子から体を落とし、床に寝転がりました
目を硬くつぶり、痛い痛いと小さな声で言い続けました
すると、頭の中に光景が浮かび始めました
お座敷に着物を着た女の人と、同じく着物を着た男の人が寄り添いながら座っています
女の人はとても嬉しそうに、お礼を言っているようでした
男の人も嬉しそうです
場面は変わり、男の人が林の中で倒れています
女の人もいますが、とても悲しくて、しかも取り乱しているようでした
着物も乱れ、手首からは黒い血らしきものを流しています
心中のようでした
でも女の人は生きています
ヨロヨロと男の人に寄り添うように横たわりました
おねが…、…してえ
おねが…、…してえ
おねがい、探してぇ
さっきまでの光景が走馬灯のようにグルグルと巡り、言葉ではない何かがスルスルと心に入ってきました
妻子のある男性に恋をして、妻と別れられない男性と心中をしました
二人の遺体がみつかり、妻はもちろん夫の遺体を引き取りました
しかし、女の人はまったく違うところに引き離されてしまったようです
そしてその男性のお墓を探してと頼むです
私はどうにもならないほどの痛みに悶えながらも
「わからないよ…ごめんね」
「探せないよ…知らないもん…」
と話していたそうです
女の人はどんどん頭の中に侵入してくる感じです
どんどん頭の中を占領し、意識が薄れそうになった時
ピーポーピーポーピーポー…
旅館の真ん前を救急車が通りました
その瞬間
女の人も、痛みもなくなりました
この怖い話はどうでしたか?
chat_bubble コメント(2件)
- 怖いと言うよりは、切なさが残る作品ですね。 脱字が所々にあるのが、残念ですが、 とても、綺麗で読みやすい作品でした。落花生
- すり込まれすぎや、悪い宗教にハマるタイプね。匿名