
中編
夜の校庭で
チャオブー 2017年6月28日
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これは、私が中学生の時の数学の先生から聞いた話です。特に「取り憑かれた」や、「◯◯が死んだ」などというマイナス要素は含まれていない、先生のちょっとした心霊体験です。
先生が小学五年生ぐらいの頃の話です。ここでは、先生を"A"と呼ぶことにします。
冬休みも近くなってきたある日のこと、先生と男友達二人(ここでは、二人を"B"、"C"と呼ぶことにします)が昼休みの教室でいつものように雑談をしていたところ、Bが、
「夜になると、校庭に幽霊が出るらしいぜ」
と言いました。そしてさらに、
「今夜さ、三人で校庭行こうぜ」
と言い出しました。この時、AとCは特に嫌がることも面倒臭がることなく、賛同しました。Bはもちろん、AもCも幽霊を見たことがなく、そのためこの時は、幽霊に対する好奇心が強かったのです。
三人は夜の七時を集合時刻として、正門前に集まることにしました。Aは、実を言うと、中学受験に向けて通っていた学習塾の予定が夜七時にありました。しかし、この日は幽霊に対する好奇心に負け、サボってしまいました。
そして夜七時になり、三人は正門前に集合しました。この時、Aだけが懐中電灯を持ってくることになっており、Aが明かりを照らす係になりました。校庭に侵入しようにも、学校全体は高いフェンスで囲まれています。しかし、校庭の隅っこにあるすべり台の付近のフェンスには、誰かが空けたのか、フェンスの抜け穴がありました。三人は、その抜け穴から校庭に侵入することにしました。
三人は、正門からぐるっと迂回して、フェンスの抜け穴のある場所に辿り着きました。三人がフェンスの抜け穴を潜り、Aが懐中電灯の明かりを点けました。抜け穴のあるフェンスから見た校庭の風景をざっくり言うと、まず抜け穴のすぐ左手側にはすべり台が、右手側の少し奥まった場所にブランコが、そして左手側のすべり台よりもさらに奥まった場所には、それぞれ高さが異なる三つの鉄棒がありました。
三人は、抜け穴から校庭を左回りに、隅々まで散策しました。しかし、一周して抜け穴のあるフェンスに戻る頃、この時は三人が幽霊を見ることはありませんでした。Bが、
「何だよ。幽霊は嘘だったのかよ。つまんねぇ~...」
と不満そうに愚痴をこぼし、抜け穴からさっさと帰ろうとしました。AもCも少し期待外れに思い、帰ろうとしました。Aはその時、ふと何気なく、懐中電灯の明かりを鉄棒がある方にやりました。
その瞬間にAは、右端の一番高い鉄棒に、誰か人がぶら下がっていることに気が付きました。
「ねえ、あそこに誰かいない?」
Aは、帰ろうとしたBとCを呼び止め、手招きしました。BとCがAの元に来て、右端の鉄棒にぶら下がる人を見ました。ぶら下がっている人は背をこちらに向け、ピクリとも動かず、ただ両手でぶら下がっていただけでした。
「本当だ。誰あいつ?」
「...子供?」
それから三人は、鉄棒にぶら下がる人を、目を凝らしてよく見る内に、いくつかおかしな点に気づき始めました。
まず、ぶら下がる人の下半身が、まるでスパッと切断されたように、何も無かったのです。そして上半身は、完全にぶら下がった状態で、地面からほんの数センチしか浮いていませんでした。さらに冬だというのに、何も服を身に着けずに上半身は裸で、毛髪の無いスキンヘッドをし、そして肌の色は、血の気が無く真っ白だったのです。
「...ねえ、あれヤバくね?」
Cが言い、そしてBも、
「うん。とっとと帰ろう」
と言いました。三人は踵を返し、先に懐中電灯を持ったAが潜ろうとしました。その時Cが、
「うわっ!!」
と声を上げました。AとBが何事かとCの方を見ました。Cは、近くのすべり台を見上げたまま、硬直していました。AとBもすべり台を見上げ、Aが懐中電灯ですべり台の踊り場を照らしました。するとそこには、先程の下半身の無い真っ白い肌をした人が、両手を下についてこちらを見下ろしていました。近くで見ても、やはり下半身は無く、その様はまるで、都市伝説のテケテケのようだったそうです。
三人は大慌てで抜け穴を潜り、走って逃げました。三人共抜け穴を潜り抜け、そして逃げる際、後ろから「キャハハハッ」という甲高い笑い声が聞こえたそうです。
その後三人は、特に何事も無く家路につきました。下半身の無い人を懐中電灯で照らした際、顔をはっきりと見たそうですが、それがどんな顔だったかも、今は憶えていませんでした。
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