
中編
夏の思い出
匿名 2日前
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中1の夏休み、幼馴染のA、B、Cと4人で肝試しをやった。
通ってた学校の校舎の目の前、グラウンドを挟んだ木造の旧校舎で。この学校に入学してからずっと、旧校舎なんて絶対なんかあるじゃん、いつか入ってみようってワクワクしながらこの時を待ってた。
もちろん旧校舎の正面玄関は閉鎖されて普通は入れないんだけど、夏休み前にあらかじめ下調べをしておいた。裏手に鍵のかかっていない外開きのドアがあるのだ。扉の横に水道があるのを見ると、グラウンドで怪我してもすぐに駆け込める保健室か何かだったのかもしれない。
そして8月半ばの夜、20:00頃に4人で正門前に集まった。
お調子者のAは本当に行くのかとニヤニヤしている。イケメンのBはこれで何かあれば女子との話のネタになるとほざく。
Cはかなりのビビリなので、お前ら置いてくなよ、絶対はぐれんなよ、と繰り返している。
蒸し暑い夜だった。タオルを首にかけ、懐中電灯とスマホ、お菓子なんかを詰めたリュックを背負って俺たちは旧校舎を目指した。
まず裏手に回り例のドアのノブを回す。ガチャッと音がして簡単に開いた。思った通り、暗い室内に白いベッド、医者が座るような丸椅子、が残っている。ここの主だった先生が私物は全て持っていったのだろう。全体にがらんとしている。
懐中電灯で足元を照らしながらゆっくり進む。壁にぼろぼろの健康だよりやポスターがちょっと残っているくらいで、あとは何も無い。
まあ最初はこんなもんか。俺たちはそのまま薄暗い廊下に出た。
なんかさ、思ってたより普通じゃね?とA。
まあなあ、元々ただの学校だしな、とB。
なんか聞こえない?気のせい?とC。
気楽に行こう気楽に、探検だから、と俺。
廊下の端にある階段を登り二階に上がる。ここは教室が並んでいて、窓ガラスからは月明かりが差し込んでいる。
雰囲気あるね、とAが茶化す。
2年1組と書かれた教室に入った時、Aが手で弄んでいた懐中電灯を床に落としゴツッと鈍い音がした。ひっ、と悲鳴を上げたのはもちろんCだ。
お化けに気づかれちゃうよ、と笑いながら懐中電灯を拾い上げた時。
か え し て
一瞬にして笑いが止んだ。
辺りを照らす。
そこにはっきりと浮かび上がったのは体操服姿の女の子だった。
かえして、かえして、ごめんなさい、いたい、かえして、ごめんなさい…
小さな声だがやけにはっきり聞こえた。俺たちは教室を飛び出し廊下を一目散に走った。
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