
長編
とあるホテルでの出来事
匿名 2024年9月29日
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書き逃げ。
身バレ嫌だから所々フェイク入れてあります。
矛盾があったらごめんなさい。
けど起こった事は全部本当。
前置きも本題も長い上に、オチも気持ちのいいものじゃないので、暇で死にそうな人だけ読んでください。
私の職場は中規模なリゾートホテルで、オーナーが変わる前は宿泊、日帰り温泉OKのホテルだったんだけど、今のオーナーになってからは、方針がガラリと変わった。
まず食事が普通食からマクロビ食に変わり、ヨガのインストラクターを呼んで講義、研修をしたり、色んな動物を飼育してふれ合いイベント等をするようになった。
もともと鶏は数羽飼育していて、鶏舎はあるが、昼間は広い敷地で放し飼いしてた。
これは前オーナーの趣味みたいなもんで、産まれた卵はたまに食事に出していたけど、今はスタッフが貰って帰ってる。
「喧騒から離れ疲れを癒し、自分と向き合う」みたいなテーマで、テレビも撤去、Wi-Fiは繋がってるけど、特にパソコンとかは無い。
日帰り制度は廃止、完全に宿泊客のみが利用できる施設になった。
こんな風になってからは、リピート客はごっそり居なくなり、前は小さな子供からお年寄りまで幅広い客層だったけど、今は若い女性や、いわゆる意識高い系の客がめちゃくちゃ増えて、スタッフも大幅に変わった。
広い敷地だけあって、宿泊客は散歩をしたり日光浴をしたりと、それなりに楽しんでくれていたが、オーナーの思い付きでグランピングとか、キックボードの導入が始まり、その為の遊歩道を作らなければならなくなった。
私は敷地のメンテナンス担当だったので、業者を呼んでキックボードが快適に使用できる歩道を作ったり、グランピングの為の道も作られた。
真夏の作業だったので、かなり地獄だった。
グランピングは完全に貸出制なので、後片付けは全てスタッフが行う。
この作業がかなり大変で、利用客が多い時は別部署から人が借り出され、この作業でほぼ一日が終わる。
そしてマクロビ食なのにグランピングを利用する客には肉・魚介を提供するという矛盾があった。
が、それはもはや気にならなくなっていた。
それを準備するのは他のスタッフだし、もはや私たちが関与できる状態じゃなかった。
おまけにペット同伴OKにしたもんだから、犬のケージの貸し出しや、それに伴うペットシーツやクッション等、とにかく作業がめちゃくちゃ増えた。
しかもこのオーナーの思い付きは、スタッフの意見無視で決まる上、給与も変わらないから、殆どのスタッフは嫌になりごっそり辞めてしまった。
大幅にスタッフが変わったのは、これが理由。
私は敷地の作業が好きだし、何より一人で黙々と作業できるから、辞めずに残った。
残った理由としてあと一つ、鶏の飼育も敷地スタッフの仕事だったのだが、とにかくみんな可愛くて、特にサスケという鶏はびっくりするくらい頭が良く、鶏とは思えないくらい愛嬌があり、名前を呼べば駆け足で寄ってきてくれて本当に愛らしかった。
敷地スタッフは私以外みんな辞めてしまったので、とにかくこの鶏達は自分が守らなければ!という使命感があった。
元のスタッフは半数以下になってしまったが、私と同時期に入ったAという奴がいて、Aは客室等のメンテナンススタッフだった。
掃除、洗濯、ベットメイク、夜勤、その他雑用、もちろんグランピングの作業もメンテスタッフの仕事に含まれる。
Aも辞めるかどうかかなり悩んでいたが、サスケが可愛いのと、鶏舎の状態が悪化することを危惧して辞めずに残ってくれた。
これが前置き。
長くてごめんなさい。
新しいスタッフは、若い女性が殆どだった。
敷地スタッフは、力仕事が多いので男性スタッフも数名いたが、私含めほぼほぼ会話が苦手なコミュ障ばかりだった。
全体数として、フロントスタッフ三人・メンテナンススタッフ五人・敷地スタッフ私含め五人・動物専属スタッフ四人・厨房スタッフ五人・夜勤専属スタッフ二人・経理等、業務処理スタッフ五人・そして謎枠スタッフ四人(以下B・C・D・E)。
心配しかなかったが、とにかく日々の仕事をこなすので精一杯で、あっという間に日々が過ぎていった。
そして新体制になってから数ヶ月後、閑散期に入り、やっと一息つけると思ったら、また新たな悩みの種が増えた。
B・C・D・Eとその友人(以下F)とやらが、なんと客室とグランピングを好き放題利用して、その片付けをメンテスタッフにやらせるというあたおか案件が発生したのだ。
当然のように利用料金は支払わず、食材なんかも経費でおとしていた。
もちろんAは激怒、他のメンテスタッフも抗議したが、「オーナーが使って良いって言ってたもん」と聞く耳持たず。
利用するにしても、片付けは自分たちでやれと言い争いになったが、「自分たちは友人を招待してもてなしている」「オーナーも快諾している」と言って、解決どころかどんどんヒートアップしていった。
このBという女はかなり曲者で、客だろうと上司だろうとタメ口で話し、態度がものすごく大きかった。
私が一日中遊歩道の作業をしてクタクタになってる時に、「暑いのによくやるよね〜 おつおつわろり〜ん」とぬかしたうんこたれだ。
どうもこいつが中心になって好き放題やっているようだった。
「うちはオーナーとは昔からの知り合いだから」を連呼しているとは思っていたが、スタッフの中ではオーナーの愛人として有名だったらしい。
そのバトルから数日後、忘れようもない事件が起こった。
Fがキックボードでサスケに突っ込んで死なせやがったのだ。
遊歩道を作った際、鶏たちに危険がないよう、柵とネットで歩道とは大きく距離をとって、鶏のスペースを十分に確保した鶏お散歩コースを作っていた。
なのにわざわざFは柵とネットを越え、キックボードを持ち込んで鶏の群れに突っ込んでいったという。
「懐いてるとはいえ避けると思った」とぬかし、謝罪の言葉は一言も無かった。
サスケは本当に人懐っこくて、呼ぶと独特な鳴き声で返事をしてくれた。
柵の向こうから来る人間にそこまで警戒していなかったのだろう。
Bは「ここはマクロビ食だしグランピングでしか鶏肉は出せないねぇ〜」と笑いながら言ったので、私は「お前らが人語を理解できないのは知っていたが、ここまでクズなのか!!」と怒鳴り散らしてしまった。
BとFは黙った後、「うざっ」と言ってどこかへ消えていった。
その後オーナーに許可を得て、Aとおいおい泣きながらサスケを敷地の端に埋め、今後ここでやっていけるのだろうかと二人で落ち込みながら、仕事終わりに私の家で酒を飲み、寝落ちした。
サスケの件から数日後、Aが「ネットで人を呪う方法を見つけてきた!」と休憩中にはしゃぎながら走ってきた。
またベタな… と思いつつも話を聞くと、呪いたい相手の髪の毛さえあれば叶うとのことだった。
そんな方法なら世界中の人間が呪われるだろと笑ったが、A曰く呪う側の気持ちが大事だと。
強く相手を憎めば憎むほど、呪いの力は大きくなり、効果も目に見えて分かると。
アホくさと思ったが、メンテスタッフが足りない時に大浴場の掃除をしたことがあり、そこで排水口にごっそり髪の毛が溜まってたので捨てたのを思い出した。
Bたちも客室を利用する時に大浴場を使ってたから、排水口の髪の毛使ったら?と軽い気持ちで伝えた。
Aは目を輝かせながら、それだ!と言ってナイスアイデアだと喜んでた。
でもB以外の髪の毛もいっぱいあるだろうし、関係ない人も呪っちゃうんじゃない?って聞いたら、Aはうんざりするように言った。
「ここだけの話、リピート客は意識高い系とか言ってるけど、挨拶できない人間ばかりだし、部屋に掃除に入った時なんかは、マクロビ食じゃ物足りないのか食べ散らかしたお菓子とかコンビニ食が散乱してる。
トイレなんかは最悪で、便器はうんこまみれだし小便らしきものが床を汚してびしょびしょになってる時がある。女も便器外す時あるんだって驚いた。
廊下にある共同トイレなんかは、同室の人に隠れて食べてるのか知らんが、カップ麺が汁ごとゴミ箱に捨てられたりしてて、異臭を放ってる時がある。
他の利用客からも異臭のクレームが出てるし、意識高いなんて聞いて呆れる。
もはや意識ない。重症。」
鬱憤が溜まってたんだなぁと思いつつ、最後のワードに盛大に吹き出し、まぁ好きにやりなよって言っておいた。
その会話から1ヶ月も経たないうちに、妙なことが起き始めた。
Fがグランピング中に「くちばしが痛い!」と連呼しながら絶叫し、倒れて救急車で運ばれていったと聞いた。
一緒にいたBたちは青ざめて、その日はB・C・D・E全員が仕事放棄して早退していった。
Aの呪いの話が頭をよぎり、くちばしというワードが引っかかったが、Aとはシフトが合わないのと、夜勤もしていたし顔を見れずにいたので、まぁ偶然だろうと流した。
もし本当に祟りがあったとしても、あの可愛くて賢いサスケが祟るなんてあり得ないと思った。
それからまた数日後、今度はリピーターの利用客数名がグランピング中に「羽根がちぎれる!血が出てる!」と騒ぎ、鼻血を出して倒れた。
また救急車を呼ぶ事態になり、Bたちは顔面蒼白になっていた。
Fは運ばれた日以来ホテルに来ることはなく、Fの話はなんとなくみんな触れないようにしていた様子だった。
それからすぐ、Bにも異変が現れた。
出社してきたと思ったらスタッフに、「羽根が追いかけてくる!足を掴んでくる!」と泣きながら縋り付いてきたらしい。
そのスタッフはBのことを良く思ってない人で、「鶏がBさんを恨んで出てきたんじゃないですか?」と冷たく言い放ったという。
その言葉を聞いたBは、更に泣き喚いて「うちは悪くない!Fが悪い!羽根のせいで痛い!くちばしが痛い!くちばしが痛いー!」と狂ったように繰り返していたらしい。
騒ぎを聞きつけた他のスタッフがBを宥め、その日はすぐに帰宅させたそうだ。
Bが騒いでいた日、Aも出社していたので、今まで起こったことを話し合いたいし片付け作業をしているAの元へ行った。
私の顔を見るなり、ようやく話ができるな!と嬉しそうに笑った。
私は単刀直入に、呪いとやらを実行したのか聞いた。
Aは得意げに、私の排水口の話を聞いてから、汚部屋リピーターとBたちしかいないタイミングを見計らって、閑散期を大いに利用したと言った。
閑散期はほぼ一般客は来ない、排水口の掃除は日頃から念入りにしていたし、汚部屋リピーターとBたちが大浴場を使った時に髪の毛を採取していたという。
具体的にどんな方法なのか聞いたら、黒い遮光袋に髪の毛を入れ、恨みつらみを呟きながらじわじわと燃やし、その燃えカスを湿った土に埋めるらしい。
鬱憤を晴らすにはまぁまぁな行為だったと言っていた。
きもい。
意外と簡単なやり方に驚いたが、こんなにも目に見えて効果があるのかとAが一番驚いていた。
私はオカルト的な現象は信じないが、あまりにも変なことが続いているので、Aにほどほどにしとけと伝えた。
Aは苦笑いしながら、自分もこういうのに手を出すなんて思ってもいなかったけど、Bとは会話にならないし、問題解決もできなさそうだったから、苦肉の策ゆえの行動だった。
気持ち悪い偶然なんだろうけど、正直スカッとしてる。
もう髪の毛を燃やすのはやめる、サスケも流石に引いてそうだから、と言っていた。
そんな会話をした翌日、Cが通勤途中で自損事故を起こした。
命に別状はなく巻き込まれた人もいなかったが、取り乱した様子でホテルに電話をしてきて次のような事を言っていたらしい。
「運転していたらフロントガラスいっぱいに鳥の羽根が覆い被さってきて、前が見えなくなりパニックになった。くちばしが取れた、くちばしが痛い」
その電話の後、病院に行って治療を受けたらしいが、翌日からはもう来なくなった。
自己都合による退職だって、とBに冷たい言葉を放ったスタッフが教えてくれた。
Bは発狂してから出社してなかったが、Cが辞めた日からちょうど一週間後、オーナーと共に昼ごろホテルの事務所に顔を出した。
もともと痩せ型だったが、更に痩せ細り頬がこけていた。
自慢していた艶髪ストレートはボサボサになり、口を尖らせながら左右に小さく揺れていた。
オーナーは、Bから色々話を聞いたが要領を得ない、スタッフや利用客のトラブルは報告を受けているが、くちばしが痛いとか、羽根が身体を締め付けてくるとか訳の分からないことを言って困惑している、と言った。
Bはそれを聞いて、「だからくちばしが取れて痛いんだってば!血が出てる!血が止まらない!羽根のせいで&@'!#!!(聞き取れなかった)」と怒り出した。
スタッフも困惑していて、どう答えたらいいのか分からずに狼狽えていた。
D・Eは呆然と突っ立ってBを見ていた。
私は堪えきれず、今までのことをありのまま伝えた。
もちろんAの呪いのことは伏せて。
新体制になってからスタッフの負担がかなり増え、仕事量の差が激しいこと、Bたちのあり得ない行動により、スタッフ同士が険悪になっていること、Fがサスケを殺したこと、オーナー宛てに抗議の連絡を入れたが全く取り合ってもらえなかったこと、とにかく思い付く限り全てをぶつけた。
オーナーは気まずそうにしていたが、Bはわなわなと震えだし、「お前があの鶏をたぶらかしてうちに嫌がらせしてるんだろう!!血が出てるのはお前のせいだ!!」と鬼のような形相で叫び、私の胸ぐらを掴んできた。
私は興奮していたのもあり、そもそもお前らがやりたい放題やって周りに迷惑ばかりかけてるから悪いんだろう!自分たちの行動を悔いて謝るべきじゃないのか!オーナーの愛人だろうが何だろうが関係ない、自分の行動には責任を待て!と怒鳴った。
周りのスタッフは慌てて私を宥めてくれて、自分たちも私くんと同意見だ、今まではオーナーの意見に逆らうのが怖かったが、これ以上Bたちに好き放題されるなら退職も辞さないと言ってくれた。
オーナーは更に困った顔をして、Bを私から引き離しながら、申し訳なかった、現状を全く理解していなかった、と深々と頭を下げた。
私はBの謝罪がなければ意味がない、謝罪がないならBをここから離職させて欲しいと言った。
その瞬間、Bは更に絶叫し、泡を吐きながら「喉に羽根がある… 息ができない… 頭の中にも入ってぎだぁぁぁぁ」と言って痙攣しながら倒れた。
私は慌てて救急車を呼び、オーナーは青ざめながらBの名前を呼んでいた。
おまけにそれを見ていたDが嘔吐、まさに地獄絵図だった。
救急車が到着後、BとDは運ばれていった。
オーナーは今後の事をしっかり考えると言って帰っていった。
救急車が去った後、Aが事務所に来て何事かと聞いてきた。
私は起こったことそのままを伝え、Aにもしかしてまだ髪の毛を燃やしているのかと尋ねた。
Aは強めに否定して、私と話をした後は一切やっていない、そもそも呪いなんて本当にあるわけないと少し怒ってた。
髪燃やしといてなんだコイツとは思ったが、Aの様子からして嘘を言っているようには見えなかった。
結局Bは退職し、Dも辞めていった。
汚部屋リピーターもめっきり来なくなり、しばらくは平和に仕事ができた。
相変わらずグランピングや動物のふれ合いイベントは続いているが、予約数を減らした為、無茶な仕事量にならずに済んでいた。
このままずっと平和が続けば良いな、なんて思ってた矢先に、また変なことが起きた。
Eが、仕事中に鶏の声が耳元で聞こえる、と怖がるようになった。
遠くにいる鶏の声じゃない、すぐ耳元で変な風に鳴く声がする、でも絶対に鶏の声だという。
私は、サスケを呼んだ時に返事をするあの独特な鳴き声を思い出した。
疲れてるんじゃない?と言って流したが、その数週間後、今度は「くちばしが痛い」と言い始めた。
その話を聞いた時、Aも一緒にいたので、Aと顔を見合わせた。
Aは勢いよく顔を横に振り、髪燃やしを全否定していた。
そして日が経つにつれ、「くちばしが取れた、足がちぎれる、羽根はもうダメ、許されない、許されない」と言って、生気を失っていくように見えた。
私とA、そして他のスタッフたちも、また救急車騒ぎになるのではと気が気じゃなかった。
そんな日が続いて、これはもうお祓いとかしてもらった方が良いんじゃない?とスタッフの一人が言うと、他の人たちもそれに賛同し、オーナーに相談した。
もうすぐ閑散期もあけるし、みんながしっかり仕事に集中できるように環境を整えようと、オーナーはすぐに手配してくれた。
みんなホッとした表情をしていて、私も少し気が楽になった。
しかしお祓い当日、Eが無断欠勤した。
社内スマホも個人スマホも繋がらず、スタッフが自宅に連絡したら「いつものように普通に出勤したはず。ここのところ様子がおかしいが、もともと波がある性格なので、みなさんにご迷惑をおかけしてるなら申し訳ない」と母親に言われたそうだ。
みんな胸騒ぎがして、祈祷師をひたすら待った。
祈祷の予約時間は11時だったが、10時半ちょい過ぎくらいに、祈祷師の付き添い人からホテルの電話に連絡が入った。
「ホテルに向かう道中、正面衝突された。
こちらは全員無事だが、相手側の車が大破していて、中の人たちはおそらく酷い怪我をしている。
救急車とパトカーは呼んであるが、ここから動くことはできない。
申し訳ないが後日改めて伺います」
全員が絶句していた。
もちろん私も言葉が出なかった。
そしてその電話のすぐ後くらいに、また電話が鳴った。
誰も取ろうとしなくて、それでも切れる気配はなく、ずっとコール音が響いていた。
ホテルの電話は基本的にフロントスタッフが受けるので、私は一度も経験したことがないが、恐る恐る受話器を取った。
はい、こちらリゾートホテル◯◯、敷地スタッフの◯◯(私の名前)です。ご用件をお伺いいたします。
そう言い終わる前に、電話の向こうから声がした。
「ほらもうダメだって言ったでしょ?許されない、許されない、もうくちばしはない、羽根もない、何もない、許されない、許されない」
Eの声だった。
鼻にかかったような芯のない特徴的な声なのですぐ分かった。
Eさんですよね?今どこにいるんですか?って聞いたら、すぐに電話が切れた。
わたしは黙って受話器を戻し、Eさんからでしたがよく分からないことを言われて電話切れました、と周りに伝えた。
ここだけ時空が違うのかな?と思うくらい、その場はしーんとしていた。
とにかくまた変なことが起こっているが、仕事はこなさなければいけないので、取り敢えず仕事に戻ります、とみんなに伝えた。
スタッフたちはハッとした顔をして、それぞれ仕事場に戻っていった。
グランピングの使用済み道具をまとめて洗い場に運び、ゴミを集めて台車でゴミ捨て場まで持って行った後、鶏たちの飲み水をバケツで汲んで餌場を掃除した。
元気に餌をついばむ鶏たちを見て少し癒されてた時、大きな声で私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
振り返ると、Aが慌てた様子で走ってきた。
Eの母親から今しがた電話がかかってきて、Eが事故を起こして病院に搬送されたらしいと言った。
おそらくスタッフ全員が、祈祷師の車にぶつかってきた車は、Eなんじゃないのかと考えてたと思う。
その日の夕方、警察から連絡があった。
やっぱり思ってた通り、祈祷師の事故はEによるものだった。
私はEから電話を受けたので、後日警察がホテルに来て、会話の内容を尋ねられた。
電話で言われた言葉をそのまま伝えると、警官は怪訝そうな顔してた。
まぁそうなるよね、と思った。
「救急車が駆け付けた時、Eさんは意識のない状態だった。
とても電話できるような怪我ではなく、スマホもバキバキに破壊されていた。
なのに事故後すぐであろう時間帯にホテルの通話履歴が残っていた。
しかも、Eさん一人しか車内にはいなかったのに、祈祷師たちは複数人車内にいたと言っていた。
通話したのは本当にEさんでしたか?
他に誰かの声とかしませんでしたか?」
他にも色々聞かれたが、私は電話の会話以外教えられることは何もなかった。
祈祷師から事故の連絡を受けたスタッフは、確かに「中の人たち」と聞いたと言ってたし、本当に誰か一緒に乗ってたのかな?と思った。
もしかしてBたち…?と一瞬頭をよぎったが、邪推でしかないのでそれ以上は考えないようにした。
結果的にEは命は助かったが、入院生活が長引くとのことで退職した。
Eの退職後は特に何もなく、相変わらず仕事は忙しいが本当に平和な日々が続いている。
嵐の前の静かさだったら嫌だなと思いつつ、Aとは流石にこれ以上は何も起きないだろうと絶賛フラグを立てている。
スタッフの話によると、Bはオーナーに愛想を尽かされ、自宅に引きこもって毎日泣き喚いているらしい。
Cは精神を病み、これまた引きこもりに。
Dは彼氏に振られ、それから行方が分からないとのことだった。
Fの情報は誰も知らない。
なんというか、因果応報というか自業自得というか。
とにかく色んなことが一気に起こり過ぎて、本当にこんなことがあったのかと今更疑わしい気持ちだ。
あるスタッフは、「わたしは子供の頃、ハムスターを飼育放棄して死なせてしまったことがある。呪われたらどうしよう。いや既に呪われてるからこんなに太ってるのかな?」と言って、完全にサスケの怨念がこの事件を引き起こしたと思ってるっぽい。
そこはきっぱりと否定してやりたいが、実際のところ人間がくちばし痛いなんてまず言わないだろうから、どうやってサスケの信用を回復させてやろうかと考え中。
今のところホテルのスタッフ全員、とても生き生きして仕事してます。
後日ちゃんとお祓いをしてもらえたので、その効果なのかな?
よく分からないけど。
最後に、読んでくれた人ありがとう。
この怖い話はどうでしたか?
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