ここは廃病院。
そして俺は ここに住み着いている幽霊。
もう10年くらいはいるかな。
何人か先住人がいたけど、みんないなくなってしまった。
成仏した奴もいるし、ここに面白半分で来た奴にくっついて行った奴もいる。
でもたいがいの幽霊達は、心霊スポットとして騒がしくなったこの場所に嫌気がさして離れていった。
今では俺一人だ。
だけど心霊スポットとしては健在らしく、月に何回かは肝試しに来る人間がいるから寂しくはない。
今夜もまた、お客さんが三人程やってきた。
まだ中学生くらいだろうか?
俺は別に驚かしたりはしない。
ただ『観察』するだけだ。
「ここがあの廃病院か……。嫌な雰囲気だな。」
「なんだよ、ビビったのかよ?」
「ビビってねーよ!なぁ、ビビってねーよなぁ!」
「いや、僕は怖いよ…。早く帰りたいし。」
そんな会話をしている三人組だが、なかなか中に入ろうとしない。
早く入っておいで。
「じゃあ…行くぞ」
「うん。」 「おう。」
割れたガラスの散らばった通路を、慎重に歩いていく三人。
不意にリーダー(?)が立ち止まる。
「ここマジやべぇな。俺いろんな所に行ってるけど、ここは怨念がはんぱねーよ!」
「あぁ。俺もさっきから視線をビシバシ感じてるぜ。あっちからもこっちからも……。気を引き締めて行かねぇとな。」
あっちからもこっちからもって。
俺一人しかいないのに。
怨念なんてものもありゃしません。
「ちょ、そんなにやばいなら帰ろうよ!」
「ばか、大丈夫だよ!俺達がついてるだろ?」
「そうだよ。それに俺、ちょっとした霊くらいならはらえるし。心配すんな」
「ん〜……。わかった。」
そして三人は再び歩き出す。
一階のロビーを抜け診察室などを見てまわった後二階へ。
「お前ら、ちょっと止まれ!ここから先はマジやばい!あの曲がり角の所……いるぜ。」
「俺も見た。足音もしたし。あそこにいる霊……あれは」
「爺さんだろ。」「子供だな。」
「え!?あ、そうだな、爺さんに見えたけど、子供だったかも。」
「だ、だろ?そうだ、足!足がない子供の幽霊だったな。」
俺はお前らの後ろにいるし、角には誰もいないよ。
足がない幽霊なのに足音って……。
矛盾してないか?
「ねぇ、ホントに見えるの?僕、何にも見えないからそんな事言われると余計怖いんだけど…