普通の蛇は 冬眠するのですが 家の中に住んでいた彼は 冬眠はしていなかったみたいです。
前の年の冬に押し入れにいましたし……

天井を叩いて 板をずらし 懐中電灯で暗闇を照らしましたが 彼の姿は無く 気持ち悪い不気味な虫がいたくらいでした。( 多分 ゲジゲジ )

彼を探しているうちに 年が明けそうになってる事に気付き 今年中に見付けなければ マズイかもという考えが頭を過り……

集中して 探していると いきなりの金縛りに遭いました。

押し入れの下段 四つん這いになったまま 金縛りに遭い 何でこんな時に……と思っていると 首に冷やっとした 物が触れました。

もしかして 彼が?!と思いましたが 金縛りが解けずにいたので 違う事はすぐ分かりました。

後ろに気配がありました。

4畳半の真ん中に 立っている。振り返らなくても分かる 確かな気配。

長い髪。ボサボサな髪。真っ赤なワンピースを来て 真っ赤な口紅 真っ赤なマニキュア。
それが後ろに立っていた。

そして ゆっくりと歩いて 此方に向かってくる。
歩く度に 何かが グチョッ ベチャッ ペタン 音を立てて 落ちる。
最初は分からなかった でも解った。

彼女は 数日前 近くの魚市場から引き上げられた車の中で腐敗しきった遺体で見付かった人だった。
何かではなく自分の腐敗したモノを落としながら歩いていた。

金縛りは解けない。

彼を探すのに意識を集中していたから 気付くのが遅かった。

腐敗した臭いが鼻を突く。彼女が近くなるに連れ臭いもキツさを増していく。

( 何の用?用があるなら こんな事をしなくても話は聞きます。金縛りを解いて下さい。 )

彼女は黙ったまま すぐ そこに居る。水が滴る音と 身体から崩れ落ちるモノの音。それだけしか聞こえない。

彼女は黙ってる。

( 何も話さないのね?用が無いなら 飛ばすけど 恨まないでね。 ) そう言ったあと 無理矢理 金縛りを解いて 押し入れから這い出ると 彼女と向き合った。

長い間 水に浸かっていたのが分かる。
きっと 美人だという事も分かった。
自殺なのだろう。車ごと落ちてた所を見ると 車から漏れ出る ガソリンやオイル等の液体が流れ出せば 早く発見されると思ったのだろう。

でも 彼女の計算は 巧く行かなかった。
何日も発見されず 水に浸かったまま 暗い海の底から 何を見ていたのだろう?

私 「そのまま

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