スマホを買い換えた翌日、非通知電話があった。前の日にアドレス帳に書き換えて貰っていたけど、もしかして知り合いかも知れないし、取り敢えず出てみた。
向こう側は外なのだろうか、雑音が酷く
相手の声が聞きづらい、何度も名前を聞き、耳を傾けるが名乗ってくれない。
「誰?」
つい苛立って乱暴な口調になってしまった。
「あ、ごめん。聞こえないよ?」
謝りつつ、何とか繋がろうとするが、
聞こえないのは変わらない。
暫くして、相手の方が切ってしまったようで、ツーツーツーとなる。
非通知にされているので掛け直すことは出来ない、何の用で、誰なのか?
そして、その夜夢を見た。
懐かしい思い出。
高校時代の友人と海に行った時の場面が甦る。
ああ、こんな夏休みがあったな、そういえば……。
夢で有るから抜けていたのか?
何か一つの場面が消えている。何だっけ?
当時そう思って目が覚めた、記憶は鮮明だが、消えているワンシーンは思い出せない。
でも確かに大切な何かが抜け落ちて夢に見た。
そして、翌日も同じ夢を見た。
夢には続きがあった。
前の日は砂浜で焼いていた、翌日はそれから海に入る、沖まで泳ぐそして目が覚めた。
何だか疲れた気がした。
夢があまりに鮮明なこと、泳いだ夢だったこと、波が激しかったこと、それらが疲れさせたのか?
そしてまた夢を見た。
3日続けて同じ夢で、必ず続きがある。
沖に出て、友達とビニールボートに乗った。波がさらに浜辺から私たちを遠ざける。
ボートがひっくり返った。
私は辛うじて、ボートのへりに掴まり
浮くことが出来た。
???
そこで目が覚めた、そして怖くなった。
自分の記憶から消し去ってしまっていた事実に、思い出の中の哀しみに、現実の電話の意味に。
非通知電話が鳴ったのは3回目の夢を見た翌日の朝だった。
電話自体は2回目。
ザーザーザーザー!
雨のような車の走るような雑音が耳に響く。
何となくカレンダーに目が行く、8月3日?
何かの日か?すぐには思い出せない。
あの時と全く同じ電話のシチュエーション、やり取り?も変わらない。
でも一つだけ違うのは、相手が誰であるのかが判明してしまったことだった。
多分、夢を見たせいだろう。
いや、夢がずっと知らせていた。
8月3日は……。
哀しいね、友達の命日だ!
この10年間もよく忘れていられたものだ、
そんな自分が怖い‼
私はスマホを落として、両耳に手を当てた。
嗚呼‼
1度も墓参り

通常版で読む