怪談話でよくある「開かずの〜」という話。私は、そういったものに実際に出会ったことがあります。


私がある山を登っていたところ、道の途中に一軒の廃屋を見つけました。村近くの山にはこういった廃屋がよくあるもので、その時も今までと同じように無視しようとしたのですが、私の足はなぜか止まってしまいました。

その廃屋は、今までに見た廃屋とは明らかに様子が変だったからです。誰も住んでいなさそうな家の扉に、頑丈な鎖が巻きつけられ、ドアノブには錠前が掛けられていました。明らかにおかしい。
ほんの好奇心で、私はその家に近づき、扉に触ってみました。なんてことはない木でできた扉です。扉が痛んでいたせいか、建てつけが悪くなっていたせいか、頑丈な鎖や錠前がされていたのにも関わらず、扉を押すと、扉はゆっくりと開きました。


中は廃屋とは思えないほど整理整頓されていました。木でできた机と椅子が二つ。大きな棚が二つありました。棚の中には工具箱や、子供向けの絵本などが置かれ、机の上には空になった紙コップが一つ置かれていました。机の上には、ほこりなどは付いていません。つまり、最近まで使われていたということです。
空き家だからと物好きな誰かが住みついたのだろうと思い、早々に出ようと思いました。しかし、また一つ気になる箇所があったのです。


それは、部屋の奥にある押入れ。襖で閉められてありましたが、なんだか、そこから変な匂いがしたのです。ゴミでも溜めてあるのだろうと予想しながらも、最悪な事も予想しました。開けるか開けないか迷いましたが、結局、開けてしまいました。


押入れの中…下の段には汚れた布団が。上の段には大きな麻袋が二つありました。麻袋は二つとも黒ずんでいました。匂いがしているのは確かに麻袋なのですが、その麻袋を開ける勇気が私にはありませんでした。

そのあと、すぐさまそこを立ち去り、そこの近くの交番で事情を説明しました。
するとお巡りさんは驚いた表情で
「あそこに入れたのかい⁉︎…あそこは『開かずの廃屋』って言われててね。鎖とか錠がかけてあったろ。あれで開かないんだよ。普通。でも、あの廃屋に灯りが点いてるのを見たっていう人がいてね。中に誰か住んでるのかと昨日も見に行ったんだが…開かなかったよ。窓は全部割れてて、木の板とかで入れなくてね。誰も入れないはずなんだが。」

後でお巡りさんと一緒にもう一度、その廃屋に行きました。

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