会社の帰り道に慣れた頃、自宅から一つ前の駅で降りて帰るのが日課になった。でも、会社の先輩には夜道は危ないからとやめるように言われた。明るいし、人通りもあるし、何より商店街で晩御飯を買うととても楽で、口がいつものようにはーいと返事をした。
ある日、いつものように一つ前の駅で降りると先輩に呼び止められた。
無理やりタクシーに乗せられて、家まで送られることになった。先輩にいつもの商店街の場所を聞かれて応えると、今度はタクシーのおじさんが驚きの声をあげた。馬鹿にされてムキになった私は、タクシーのおじさんに商店街まで行くようお願いした。
先輩はジジババ臭いところだと馬鹿にしてるんだと思っていた。


しかし、商店街に着くとそこは無人で真っ暗だった。


いつものようにいい匂いもしないし、そもそも街頭一本ついてない・・・。
黄色と黒のロープに立ち入り禁止の札が付いていた。
気が付くとゴミだらけの家の中で先輩と向かい合って座っていた。ゴミの中は腐ったフランクフルトなんかでコバエがたかってて、そこには私の口紅や歯形が付いていた。思わずトイレに駆け込んだ。
先輩は日に日に異臭をまとう私を気遣ってくれたのです。廃墟と化した商店街に行ったあの日、真っ暗な奥から「おーい」という声がしたんだって。私が笑顔で行こうとするからタクシーにねじ込んで家まできたものの、家の中は蛆が沸くほどゴミだらけだったというわけです。私は今まで何を食べていたんでしょうか。

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