先輩と、その幼馴染との話を。
僕にはアルバイトの斡旋をしてくれた先輩がいる。
そしてその先輩には幼馴染がいる。
笑うとえくぼの出来る可愛い女の子で、昔結婚の約束をしていた。
……とかだったら、心躍る話だ。
残念ながら、彼らにそんな関係は皆無だ。
彼は「広域に指定される粗暴な団体の方々」の使い走りをしていた。
便宜上、彼を「パシリ」と呼ぶことにする。
彼は先輩の幼馴染と言うだけあって、性格もとても良く似ていた。
いわれの無いバトルに何度も巻き込まれた。
「第一回チキチキどっちが痛いでショー」
「は? 何すか?」
ばちこん! デコピンとは思えない音。
頭蓋骨に伝わる衝撃波。
首が?
何で首が痛い!
「いった! 何すんすか!?」
「じゃあ次オレー」
がっつん!
何こいつら?
ホントに人間?
あ、ミキって音なった。
絶対穴あいた。
もれる。
僕の数少ない貴重な脳みそが。
彼らのデコピンはボールペンをへし折る威力だ。
僕なんか両手じゃないとムリだ。
いやいや、ボールペンは折るもんじゃない。
結局、「第一回チキチキどっちのデコピンが痛いでショー」は、僕が土下座することによって平和的解決を迎えた。
いつの世も
弱者が被る
罪と罰
心の俳句でも詠まなきゃやってられない。
話がそれまくってしまった。
申し訳ない、本題に戻す。
それはあるファミレスでご飯を食べていた時の話だ。
「オレ霊感あんだよ」
パシリさんが自慢げに話しだした。
ちょっと待って!
先輩の前で霊感なんてオカルティックなこと言わないで!
「そうなんすか? 僕そういうの良く分かんないです」
「幽霊とかすっげえくっきり見えんのよ」
「へえ。それより先輩クルマそろそろ車検やばくないっすか?」
話を逸らすのに必死になる。
先輩は超がつくほどのリアリストだ。
幽霊の存在など絶対に認めない。
幽霊が見えるのは病気かイケナイお薬のせいだと言って憚らない。
パシリさん、せめて僕がいないときにしてくれ。
「何? 幽霊信じてるのお前?」
やばい。
しっかり火がついてる。
戦争だ。
大怪獣二匹による戦争が始まる。
逃げろ!
しかし回りこまれてしまった!
「おお、お前興味あんの?」
「ガキじゃねーんだから、いつまでもそんなこと言ってんじゃねーよ」
「見えねえヤツにはこの辛さが分からねえんだよなあ」
「全然辛そうに見えねえっての。何? 金縛りとかあっちゃうわけ?」
「ばっか。そんなんフツーだっ

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