っぽうイスラム世界は若い男性の失業率が非常に高く(30~40%以上)、たいがいの男が結婚資金を稼げていない状態である。そして自爆テロの実行犯のほとんどが、イスラム教徒の若い男性なのである。

 アッラーから与えられるとされる72人の処女のためにもし、彼らが喜んで命を投げ出しているとしたら。なんの罪もない人びとがそれによって殺されているとしたら。それよりなお悪いことに、イスラム教徒の指導者たちが西側諸国の文明浸食に対する橋頭堡として、テロリストたちを神の名のもとにリクルートしているのだとしたら。

 いったいどれほどの殺戮が神の名のもとに実行されたのだろうか。十字軍の侵略、中世の魔女裁判、石山本願寺の焼き討ち。俺はアメリカで次のようなアンケートをしてみたい誘惑に駆られる。ベトナム戦争はたいへんな反戦感情を惹起せしめ、良心的兵役忌避者や幾多の抗議デモを生んだ。では当時そのような気高い主張をした人びとに、今度はイエス・キリストと聖母マリアと主のためにイスラム教徒の根城であるイラクを叩きのめすとアメリカ政府が決めたら、どうしますかと。俺はアンケートの結果を知りたいとは思わない。

 俺は一般人以下の脳みそしか持っていない凡人なので、全知全能という状態を想像することはできない。ただもし俺が神だったとしたら、自分のために人びとがその解釈をめぐって殺し合いをしている現状を容認したりはしない。全知全能の神通力を使って必ずやめさせる。だが冷戦終結後の世界はそうなっていない。ますます頻発する地域紛争で世界は相変わらず殺戮のさなかにある。俺はこの事実だけでも神が存在しないと断言していいと思う。

 上記の理由にもかかわらず、神がそれでも存在するとしよう。彼はどんな性格なのだろうか。ひとつだけ言えるのは、神は自分のせいで何万何十万の人間が争っている現状を見てもなんらの道徳的な痛痒を感じない、人間的な感情の欠落した機械神――デウス・エクス・マキナ――なのだ。そんな神ならいないほうがましだ。

 以上のことから、(少なくとも道徳心を持った)神はいないと証明できたのだと俺は信じる。
 この小論がはずれているとしたら――神よ、世界の現状を少しでいいから見てください。

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