勝るため、ヤマノケは女に取り憑く。

ヤマノケが憑いた後はひたすら自分を慰めるらしい、その人間が死ぬまでずっと。

ヤマノケは死なないので、その人間の体が死んだら、また新しい人間に取り憑く。

ヤマノケを落とすのに一番効果的な方法は、苦痛を与え続ける事と、またはこの上ない大きな苦痛を与える事。

具体的な方法としては、前者は拷問を続ける事。

爪を一枚ずつ剥がしていって、十枚剥がして落ちたヤマノケも居れば、二十枚剥がしても憑いたままのヤマノケも居た様だ。

後者で具体的な方法は、出産だそうだ。

出産に耐えられるヤマノケは殆ど居ないらしい。

しかしお坊さんにはそれを言わない人が多い、道徳的に。

そして俺は、選択を迫られた。妹に憑いたヤマノケがどこまで我慢できるか、妹の体を傷つける方法。

ヤマノケがおちる可能性は非常に高いが、妹を十三歳の幼さで母にする方法。

ヤマノケが勝手に出て行くのを待つ方法もあるが、そんな事はほぼ無いらしい。

両親にも連絡を取り、最初は大変取り乱していた両親だか、お坊さんが何とか話して落ち着かせてくれた。

そして選んだのは……妹に出産させる方法。

母は泣いていた。父はずっと黙ったまま俯いていた。

きっと二人とも、こんな事態になって俺が憎かったろう。

行為はその翌日に行われる事となった。父親となる人は、お坊さんが呼んでくれた専門的な人らしい。

真っ黒な髪は長く、膝位まで有り、それをひとつにくくっていて、甚平みたいな服を着てた。

お坊さんはその人に話し掛ける時、耳打ちする様に喋った。その人は頷くだけで、一言も喋らなかった。

そして次の日の夜、行為は行われた。

両親は帰って、俺は残りたいと言い残った。

お坊さんの計らいで、俺の寝る部屋と行為が行われる部屋は一番離れていた。

しかし、妹の喘ぎ声が一晩中響いていた。

俺はその夜ずっと、今までの無垢な妹の笑顔とか、思い出を思い出して泣いていた。

途中、お坊さんが入ってきて、お茶を置いてくれたが、泣き続ける俺を見て、

「だから帰れと言ったんや」

と呟いた。

そんな一夜を過ごした数日後、お坊さんが暗い笑みを浮かべて俺に言った。

「アイコちゃんに、赤子ができた。良かったな」

俺は無表情で頷くのが精一杯だった。

そして俺は家に帰ったが、またすぐに寺に行った。

家に俺の居場所は無かった。

流石に直接は言わないが、両親

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