これはかなり長文であり、駄文であるので飛ばして戴いても大丈夫です。
それは4年前の6月、だった。
梅雨に入るか入らないかの頃である。
たまたま有給休暇が取れたので、A君は夜行列車に飛び乗った。
仕事の進行次第、ということで、実際に休暇がとれるかどうかはギリギリまで分からなかったため、緻密な計画が必要なハードな山は、はじめから諦めていた。
「忙しくストレスもたまってたし、ちょっと息抜きになればと思って、比較的穏やかな松本の美ヶ原に登ることにしたんです。
2000メートルくらいの、まあ初心者級の山で、地元の小学生がよく林間学校に使う高原です」
A君は語ります。
気晴らしにはちょうどいいコースだった。
大学生時代から何回も登っていて、地形も知り尽くしていた。
「ああ、それと」
と、A君は付け足した。
「もう一つ、実は不純な動機があったんです……」
A君には、当時、付き合っていた彼女がいなかった。
おまけに男性ばかりの職場で、正直言ってくさっているところに、仕事が忙しくて女の子と知り合う機会さえなかったのである。
「美ヶ原に三城牧場という、牛がたくさん放牧してあって、そこに山小屋があるんですけど、ああそうだ、あの山小屋のそばにドラム缶風呂があったな、って、ぱっと閃いちゃったんですよね。いや……そのドラム缶風呂によく、小屋にバイトに来ている女の子が入ってたことを思い出しまして。
美ヶ原=ドラム缶風呂=女の子、っていうのがパアーッと頭に……」
A君は、ドラム缶風呂のまだ見ぬ美女を思い描いて夜汽車に乗ったのである。
しかしその不純な動機こそ、恐怖体験の元凶となってしまったのだ。
列車は明け方近く松本に到着し、A君はバスに乗って登山口で降りると、そのまま休まずに歩き出した。
「ドラム缶風呂が俺を呼んでたんですよ。もう食事をとらなくても平気でしたから。いや、大した山じゃないっていう気がやっぱりあったんでしょうね」
順調に登山したA君は、夕方前、まだ陽が高いうちに目的の山小屋がある三城牧場に到着した。
6月だというのに気温の高い高原は、夏には青々とした緑の海になるはずの牧草も、まだまばらだった。
藁のような枯れ草の間から岩肌がのぞき、それでも牛の放牧が始まっていて、白と黒のツートーンカラーの牛たちが、点々と見えていた。
ただでさえ変わりやすい山の天気だが、
梅雨時のためしきりにガス(霧)が巻き、時々霧雨が頬を濡らした。
「そろそろ山

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どこの山? 鹿児島のS山で似た体験をしました

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