大学生も半分過ぎた3年の春、単位を落とし過ぎた俺は自身の遅刻癖を通学時間のせいにして、親を必死に説得して遅めの一人暮らしを勝ち取った。
とはいえ我が家は裕福なわけではなく、仕送りもろくに貰えるアテはない。出費は少しでも抑えたほうがいいと、事故物件でもなんでもいいから家賃の安いところを端から内見をしていた。
その中にあったのが、家賃2万代で1dkのロフト付きという破格のアパート。事故内容も、前に住んでたおばあさんが老衰で孤独死したというもので、自殺や殺人でないならまぁいいか、とそこに住むことに決めた。
新居で過ごすようになってからひと月ほど経った頃、俺は変な物音を聞くようになった。
俺がロフトにいると、下の部屋から子供の声が聞こえる。
五.六歳くらいの男の子が「ぶーんぶーん」という声と、おもちゃの車を動かすようなタイヤのガリガリ音。はじめこそ怖かったが、貧乏大学生には引越しをする余裕もない。聞き間違いだと自分に言い聞かせ、気にしないように努めながら過ごした。
何ヶ月か経つと、最早その声にも慣れてしまった。声がするのは決まって昼間から夕方前の明るい時間なのと、特に実害もなくその声も楽しそうであったため、もはや小さな同居人がいるかのような気持ちになってきた。「あー、今日は車で遊んでるな」「今日はコマでも回してるのかな」などと考えながら声を聞くのが日課となるほどであった。
だがある日、夕方で止まるはずの声が18時を過ぎても続いていた。いつもは遊んでいる男の子の声は、しきりに「まだかなー、まだかなー」と呟いている。外も暗くなっており、「冷静に考えると結構怖い状況だよな……」などとぼけっと考えながらロフトでレポートを書いていたその時、玄関の開く音がした。
おかしい。鍵は閉めたはずである。友達を呼んだ覚えもないし……などと焦っていると、誰かがこちらに歩いてくる音がする。もし不審者や泥棒なら、今降りて鉢合わせるのはまずい。俺がロフトで息を殺していると、その足音は俺(と声だけの男の子) のいる部屋の扉を開けた。
「来た……!」と思った瞬間、男の子の声が「あ!帰ってきた!」と叫んだ。
「おかえりなさい!」「あのね、今日は誕生日だから待ってたの!」と楽しそうな声。次の瞬間、明らかになにかを殴ったような鈍い音がした。「ごめんなさい、ちがうの」「よろこんでくれるかなって」「ごめんなさい!もうねるから!ごめんなさい!」と男の子の声が続く。次

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コメント(4)

母親同じくしてやりたいわほんと

実話ですか?

お婆さんが老衰で孤独死…と違うのかと 言う事が頭を過ぎるも、 男の子が可哀想過ぎて心が痛みます。 お婆さんの孤独死の事など寧ろ問題視 する事でわはくなり男の子の事で 胸がいっぱい。

特定を避けるために多少フェイクは入れてありますが、ほぼ実話です。

村紗 黄色さんの投稿

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