この話は、テレビでも放映された、知り合いの投稿です。

「キャーッ!だ、誰か来て………」
と、女性の甲高い悲鳴が、突然フロア全体に響きわたりました。
私は、ビクッと声のほうに振り返りました。
「もしかして、また?………」
と、数日前から起こっている奇妙な事件を思い出しながら、私はひとり声を震わせました。
そこは福岡市内のあるファッションビルの3階フロアで、有名ブランドのブティックが並んでいましたが、そのフロアでは1週間ほど前から不思議な殺傷事件がつづいていたのです。
洋服を試着するために試着室に入った女性が、その狭い個室のなかで腹部や胸部を鋭利なハサミやナイフで切りつけられたり、突き刺されたりするという事件がつづいていました。
被害者のなかには、腹部に大きなハサミを突き立てたまま試着室から這い出してきたという女性もいたそうです。
しかし、そのフロアで働く販売員たちは、事件直後に不振な人物などひとりも見かけておらず、現場を調べた警察官たちも、いったいいつ誰が店員の目を盗んで試着室のような狭い個室のなかに入り、犯行を行い、事件後どこに逃げたのか、証拠もまったく見つからなかったので、犯人については見当もつかないままになっていました。
さらに奇妙なことに、事件の当事者の女性たちは揃って、
「試着室に入って洋服を着替えていたら、突然、鏡のなかの自分が、刃物を持って自分に襲いかかってきたんです………」
と事件のようすを語っていました。
ナイフやハサミを持った自分が鏡のなかから飛び出してきて、切りつけたというのです。
女性たちは錯乱状態のまま病院に運ばれましたが、幸いなことに死亡者はまだ出ていませんでした。
私は、自分の店では起きていないものの、その日までに同様の事件をすでに3件も見ていたため、その悲鳴を聞いたときは「なんてことなの、また起こったのかしら………」と身を震わせたのです。
悲鳴のあった店に駆けつけてみると、腹部にナイフを突き刺したままの女性が床に横たわっていて、その横に女性店員がぺたりと床に座り込んで身体を震わせていました。
私は、すぐにそばにいた店員仲間に救急車を呼ぶように指示し、被害者の女性のところに駆け寄りました。
ドアが開いたままの試着室から、その女性のところまでは赤黒い血が点々と落ちており、女性の身体の下はすでに血の海が出来ています。
「大丈夫?………あ、動かないで、いま救急車を呼んだから、もう少し頑張っ

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