兄の友人であるAが20代前半の頃の話。


当時Aは東京都内のアパートで彼女と同棲していたのだが、
その彼女が、所謂「メンヘラ」だった。

予定より少し帰宅が遅くなっただけで夥しい量のメールや電話が鳴り、また自殺未遂も頻繁にあったそうで、徐々にAも精神的に弱っていたそうで。

兄はAに会う度に
「別れた方がいいんじゃないか?」
と助言をしていたのだが、
「発作さえ起きなければ優しくて明るくて良い子なんだ。」
とAはその彼女と付き合い続けていた。


ある冬の日、Aはとても仲の良い友人の結婚式に招待された。
「今日は大事な友達の結婚式だから、帰りは遅くなるけど終電には帰るよ。」
と家を出るときに伝えると、
「わかった!楽しんできてね!」
と、彼女はとても明るく見送ってくれた。

安心して参加したAは、とても仲の良い友人の結婚式というのと、久しぶりに再会する友人も多く、
二次会の途中には想定以上に泥酔をしてしまった。


意識が戻ったのは朝の6時半。
居酒屋で目が覚めたAはすぐに彼女の事を思いだし、
急いで携帯を開くと、
そこには、数百件に及ぶ電話とメールが届いていたそう。

急いで荷物をまとめて帰路に着き、道中にメールを確認すると、

「もう終電ないよね?」
「誰といっしょにいるの?」
「私なんてもうどうでもいいの?」
「女といるんでしょ」
「もう知らない」
「死ね」
「死ね」
「死ね」
「死ね」
「死ね」

と、後半200件ほどはすべて
「死ね」
という一言のみで、
最後のメールは6時24分で終わっていた。

急いで何度も電話をかけるが出ない。
また今日も怒らせちゃったなぁ…
と思いながらアパートに着き、
自室の玄関の鍵を開けて扉を引くと

ガンッ
と、チェーンを掛けられているようで数センチしか扉が開かない。

え…
入れないんだけど…
どうしよう…
と悩みながらも、

「帰り遅くなってごめん!チェーン外して!家入れて!」

と隙間から声をかけてみるが、
寝ているのか無視しているのか、何も返答がない。

季節は冬。
寒さで身体的にも厳しく、どうやって家に入ろうかと考えている時、
ある事に気が付いた。

掛かっているはずのチェーンが、扉の隙間を見ても見当たらない。

あれ?どうなってるんだ?
と思いながら、両手で扉を強く引くと、

ズルズル

と、
ドアノブで首を吊った彼女が引き摺られた。

扉が開かなかったのは、

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