小学生時代の話。
当時住んでた家を二世帯住宅に建て替えることになって、その間は近所の祖父の家に居候することになった。

祖父の家は車20台は余裕で入りそうなくらい広い庭があって、庭の隅には橋がかかった池があった。
池の中には何もいなかったけど、トンボが卵を産みに来たりカエルが側で鳴いていたりした。
とにかく家自体もバカでかくて、玄関は旅館みたいだし、ししおどしがある中庭があったり、すげー広い和室があったりで、例えるならサマーウォーズに出てくる陣内家みたいな感じだった。
二世帯住宅が完成したら取り壊すことが決まっていたけど、子供心に勿体無いなと思っていた。

その祖父の家で暮らし始めて一週間くらい経った日。
確か夏休みに突入したくらいだったと思う。
両親も祖父母も出かけていて、珍しく俺と2つ上の姉だけで留守番をしていた。
いちばん涼しいのが一階の、ちょうど池が見える和室だったので、そこで一緒に宿題をやっていた。

「ねえ、あれ」
しばらく黙って宿題をやっていた姉が、いきなり俺の肩を叩いて小声で言った。
え?と思い姉の指差す池の方を見ると、池の橋(1メートルくらいの短くて小さい橋)に、変な生き物がいた。
身体はどう見てもキジトラの猫、だが顔がおかしかった。
明らかに人間の顔、それもしわくちゃのおばあさんの顔で、それがニマーっと笑ってこちらを見ていた。
猫耳みたいなのもついてた。

姉は結構肝が座っていたので、俺が止めるのもお構い無しにその人面猫に向かって消しゴムを投げた。
が、それは当たらず池にポチャンと落ちた。
人面猫はしばらく池の波紋を見ていたが、祖父が帰宅する音が聞こえると奥の植え込みに逃げてしまった。

帰ってきた祖父に姉が人面猫のことを話した。
すると祖父はガッハッハと笑いながら
「それは皮膚病で顔の毛だけ抜け落ちた野良猫だよ」
と言った。
祖父も、顔だけ見事に毛が抜けた狸や猫を見たことがあるらしい。
姉は納得したようで
「な〜んだ、怖がって損した〜」
などと言っていたが、俺はあれは猫ではないと思った。
まず、目が猫の目ではなかったし、口もちゃんと唇があった。
何より輪郭が人間だった。
けど、そんな事を言った所で見間違いだと言われるのがオチなので、俺は黙っていることにした。

それからしばらくは何もなく、俺も人面猫の存在を忘れていた。
が、夏休みも終わりに近づいたある日の夕方、"それ"は

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