21世紀は飽食の時代であるという。
 確かにわれわれは日々、自分で注文した料理を半分も食べずに残す。結婚式の二次会で会話と飲酒に夢中になるあまり、コース料理がほとんど手をつけられないまま下げられていく。

 いっぽう致命的に食料の足りていない地域が厳然と存在するのも事実である。骨と皮だけのアフリカ難民たち、1日3ドル以下の予算で生活する中国奥地の貧農たち。
 われわれは彼らを助けたいと心から願っているし、実際に寄付をしさえする。にもかかわらず依然として飢えに苦しむ人びとは後を絶たない。いち個人が高性能の端末を保有し、世界中誰とでもつながれる21世紀になってもなお、こんな状況がはびこっている。
 われわれにできることはあるのだろうか。

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 マルサスの〈人口論〉が著されたとき、人びとは恐怖に打ち震えた。
 このままのペースで人間が増えていけば遠からず、全地球的な飢餓が訪れるのだという。マルサスの主張は次の通りである。人口が幾何級数的(2のn乗を指す。nの数が増えるほど爆発的に数字は増す)に増えるのに対し、農業は土地などの制約から、等差数列的にしか増えない。したがって食糧危機が訪れる、という論法である。

 確かに人口は爆発的に増えてはいる。この2世紀ほどで世界の人口は10億程度から一挙に60億人にまで増えた。マルサスのしたり顔が見えるようだ。しかし彼は資本主義の力を考慮に入れていなかった。

 資本主義は需要を満たすよう人びとに圧力をかける。食料の増産が利益になることを喝破した一部の人びとや純然たる公共心から増産の研究をしていた研究者らが結託し、この問題に決着をつけた。1940~60年代に投入された改良品種、化学肥料が著しい収穫量の向上を実現し、多くの人びとが飢えから解放されたのである。これは〈緑の革命〉として名高い。

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 進化論には生存戦略という概念がある。
 一般的に魚類は数万単位の卵を放出し、数で勝負する。海は多数の捕食者がひしめく魔境なので、少数の子孫を産んでいるようでは次世代へ遺伝子を引き継ぐのは難しい。そこで大量の卵を産生し、確率に頼るわけだ。1万匹の子どもすべてが全滅する可能性は低いので、つねにほんの少数は生き残って次世代を担っていくだろう。これは生殖のr戦略と呼ばれている。

 反対に大量の卵を産生するコストを凝縮し、ほ

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本宮晃樹さんの投稿

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