酸素濃度が急に下がったように、息苦しい。
「やめろよ。こええだろうが」
「いや、うん、でもここはマジでやばいかも」
「だからそういうこと言うなって。ビビるから」
友人は徐々に本気で怖がりつつあるようだった。

あまり彼を怖がらせても可哀そうなので、俺は努めて明るい声を出して彼を振り返った。
「ま。何もなかったんだし、大丈夫だろ。もう帰ろ・・・」


友人のすぐ後ろに、白い服を着た髪の長い女がうずくまっていた。
子供のするように膝を抱えて、顔を伏せて座っていた。
薄闇の中、その女の姿はハッキリと見えた。


「なに?どうした?」


俺の顔を不安そうに見つめる友人と目が合った。その後ろで女がゆっくりと体を起こそうと動いた。

俺は無言で歩き出した。
「え!ちょっと待って!」
友人が慌ててついてきた。
「なになに?どうした?なんか見えたの!?」
俺は無言のまま、競歩で山を下りた。友人はかなりビビっていたが、今見たものをここで話すべきではないと思ったし、何より後ろを振り返る勇気がなかった。


山を下り、車に乗り、その場を離れ、ようやく俺は今見たものを友人に話して聞かせた。

「あのままあの女と目を合わせてたらやばかったかも」
「・・・・・・もうやめよう、あんなとこ行くの」
「・・・だな。写真も処分しよう」


あれは一体、何ものだったのだろうか・・。

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