離は空いていましたが、この真っ暗で先の見えないトンネルをライトも点けずあの車は進んでいったのか。
はたまたもう通り抜けて行ったのか、この先の見えないトンネルを。
トンネルを前にし叔父が車を止めます。
各々、思考を巡らせる静寂が車内に流れます。
嫌な感じ
それだけは確かです。
「叔父さん、戻ろう」
ふと、死んだ祖父の姿が脳裏を過ぎりました。
私がいうか、叔父が乱暴にバックし車の向きを切り替えるのが先か。
捕まれ、そう叔父はいうと、坂道を下るにしては強めにアクセルを踏みスピードを出し道を下りました。
その間私は叔父さんっ!叔父さんっ!と、もっと早くと急かしていました。
母は何故こんなに慌ててるのかと行った風にキョトンとしていましたが、私と叔父の只ならぬ雰囲気に察したのか黙っていました。
振り向く勇気はありませんでした。
何かがいるとかではないです。
ただ、行ってはいけない場所。
その意識が強く、何でもいいからあの場から離れたかった一身でした。
坂を下り、来た道を戻らずに祖父の家のある県の方角へ車を無言で走らせて行きました。
何を言うか躊躇うほど、私は緊張していました。
例のトンネルからだいぶ離れ、無言で道を探していると、本来乗るところよりも一個先の有料道路の入り口を見つけて乗ることができました。
有料道路を走りながら、私はやっと人心地つけた様な気になり、意を決して叔父に尋ねました。
「何か、みた?」
「いや…おまえは?」
私は、見てない。でも酷く嫌な感じがして焦ったと答えると
叔父はそうかと、言って押し黙ります。
霊感とまでは行きませんが、私より経験の多い叔父の事です。何かあったのではと思い、追求します。
「なんで、急に向きを切り替えたの?私が言うより早かったよ?」
少し黙って、叔父は
「親父の怒鳴り声が聞こえたんだ。昔っから聞き慣れた怒鳴り声で『戻れ!!!』って」
だから、慌てて切り返した。
そう言って、にしても変な道だったな!と、おちゃらけ始めたので、私もほんと気味が悪いとこだった!と乗っかり、母は叔父さんが心配で、お義父さん化けて出てきたのよと、3人で何とか笑い話にしました。
その後無事にたどり着き、葬儀や諸々を無事に済ませることができました。
ただ、数年経った今でも何だったのだろうと回想します。
進んでいたらどうなっていたのか、
そもそも前を走っていた車は?
叔父が声を聞いた
この怖い話はどうでしたか?
コメント(1)
霊感も遺伝子ですよね
匿名