(実話構成です、父を偲び忠実に再現したいので「会いたい」に加筆しました)

父は見えないものを全く信じない
唯物論者だ
幼少のころから霊感のある私とは対照的
法事の席で祖父が訪ねてきたことすら一笑に付してしまう
現実主義とは少し違う
この世と歯車が合わないことに気持ちがついて行かなかったのかもしれない

結婚してから遠くで暮らしていたこともあり
年に数回しか里帰りができなかった
痩せた父を見たとき
ただならぬ悪寒が走った、病院に行くことを勧める私を宥めるように
寿命を全うする
そう、呟いたように聞こえた

強引に病院に連れて行ったとき
半年の余命宣告を突き付けられた
入院した父の看病をしながらも
肉体は亡くなっても霊魂は生きる話をした
(宗教を信仰しているわけでも、誰かに教えられたわけでもない、経験論から得たことを素直に伝えた)
「そんなことも、あるのかな」
猜疑心の交差した視線で私をとらえながら、ふっと息を零した
お父さんが死後の世界があると分かったら、私に知らせてくれる?
懇願すると、頷いた父の頬から涙が一筋、伝った

春先の午前零時を回った頃
眠る支度をしていると、急に、心臓の鼓動が早まった
苦しくはない、大波がサインカーブを描くようで、ドクンという大きな音を立てた
時計の針は零時6分を指していた
父を感じ、すぐに病院に向かう支度をしていると母から電話が鳴った
父が亡くなった

息を引き取った時刻に、知らせに来てくれたことで
もう十分だった

父は生前、蝶に化身して飛翔したいと話していた
オフィスに突如現れた透明な白い大きな蝶々
何処からも入れるような隙間などない
まして高層ビルなのだから
数人が蝶々を見つけて騒ぎ始めた
見えない?いるよ!
どこ?
あんなに大きな蝶々が見えない人もいる
父が、それを見せてくれた

お父さん、ありがとう
もう十分伝わったよ
私の方に向かって飛翔する蝶々を捕まえようと両手を伸ばした
指先に触れた瞬間
シャボン玉が割れるように、鱗粉を撒き
すーっと、消えた
途端に父が愛用していた整髪料の匂いがあたりに漂い
堪えきれなくなって、声をあげて泣いた
ちょうど四十九日だった
会いたい
会いたい

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コメント(19)

怖いというか…泣けました。美しい。 立派なお父さんだったのですね。

感動しました。 良い話だと思います。 お父様への思い、大事にして下さい。

会いたいと私も強く思う時期がありました。 両親ともなくしてしまいましたが いつか会った時に恥じぬ生き方を志しています。 さらさんも お父様が安心されるように強く生きていってください。温かいお話ありがとうございました。

生きている人から見れば良い話に聞こえますが、しんだ人から見たらどれだけ苦労して伝えたかとおもうと、やるせない気持ちになりますね

怖いと謂うより感動しました。良い話ですね。二フェーデービル(ありがとうございます)

涙が出ました。 お父様お伝えに来てくれたんですね。

昔読んだ怪談レストランシリーズでこれとよく似たような話があったよ。 仲のいい女性同士お互いどっちか亡くなったら鈴の音を鳴らしてあの世がある事を伝える話。 でもホントにこういう事あるんだねぇ。

羨ましいです。 私も父が大好きだったから、今でも大好きだから、いいなぁ 会いたいです。 怖いと言うより温かいですね。

こちらこそ、素晴らしい 体験談を、ありがとうございました 心が温まりました

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