私がまだ学生だった頃、先輩の宮本から聞いた話だ。

宮本は私の知り合いの中でも時々話題に上がる、いわゆる「見える人」だった。

と言っても、彼自身は実際の経験もあるためかあまり怪談やオカルトの類は好まず、もっぱら私を含んだ数人が宮本を囲んで彼から話を聞く、というのがいつものパターンである。

その日、いつものように宮本の暮らしているアパートで知り合い数人を呼んで飲み会をしようという話になり、私は他の友人より先に宮本の部屋に行き、飲み会の準備を手伝っていた。

料理の具材やお酒の買い出しなどを終え、あとは友人が来るのを待つだけとなった時、不意に宮本が昨夜見た夢の話を語り始めた。

「昨日の夢はちょっと不思議というか、不気味だったなぁ」

唐突に喋り出すものだから、それが私に言っているのか独り言なのか、一瞬 分からなかったのを今でも覚えている。

「怖い夢でも見たんですか?」

宮本が八畳一間に置かれたソファに腰掛け、テーブルを挟んで玄関へ伸びる廊下側に私が座って、つまみを乗せる食器を並べながらそう尋ねた。

その時の彼は何というか、こちらに視線を向けているのに何処か別の所を見ているような、不思議な眼差しをしていた。

「うんん…怖いというか、何というか」

歯切れの悪い宮本に話を促しながら、訥々と語り出した彼の見た夢の内容をまとめると、以下のような形になった。

夢の中で宮本は現在 住んでいるアパートの浴室にいたらしい。

そこで彼は何をするでも無く、ただぼんやりと浴室の中を見ていたそうだ。

そして何と無く、これが夢である事を認識し始めた頃、不意に浴室の中にぽちゃん、ぽちゃんという水滴の落ちる音がし始めた。

水滴の落ちる音は次第に大きくなり、そして雨音のように聞こえるまでになると、天井から所々ほつれている茶色の太い荒縄が伸びてきた。

何の前触れもなく、唐突に天井から縄が伸びてきた、と夢の中の宮本は認識し、しばらくうるさい水音の中でその縄を見つめていた。

そして、どれくらい縄を見続けていたのか、気づくとあれほどまでに煩かった水音が止んでおり浴室の中は奇妙なほど静まり返っていた。

宮本はそこで、不意に目の前に垂れている縄で首を吊りたいという衝動に襲われたという。

そして、彼が天井から垂れる縄に手をかけると、浴槽に被せてある蓋がぼこっ、と動いた。

まるで浴槽の中の何かが、内側から蓋を押し上げようとしたかのよ

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七品さんの投稿

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