口に白いものが立っているように見えます。
なんだろうと思って目を細めると、それは背の高い人間でした。それこそかなりベタな幽霊の出で立ちで、白い服に長い髪の人が立っています。ただ、横の土手の大きさと比較すると、本当にバスケットボール選手のように背が高くて、肩幅もあることが分かりました。
人口の少ない町でしたから近くに住んでいる人はみんな知っていましたが、同じ地区にそんな人がいた覚えはありません。
私はその異様なものから目が離せずに、立ち尽くしました。
その光景を見てさすがに変に思ったのか、父が近づいてきて私の視線の先に目をやると、一瞬大きく目を見開きました。
それからすぐ私の背を押して、早く家に入るようにと言いました。
それでも私が気になって、ちら、と道の方に目をやると、
「見るな。見ちゃいけないんだ。」と低い声で言い、私の手を引いて半ば無理やり玄関へ連れて行かれました。

そのあと家の中で父に問い詰められました。声を荒げて怒られたわけではありませんでしたが、どこか苛立っているような、不安にかられているような、そんな雰囲気でした。
「あの道は通っちゃいけないって言ったでしょう、どうして…」
「部活が遅くなって、早く帰らなきゃいけないって思ったんだよ…それよりあれはなに?知ってるの?誰?幽霊なの?」
父は私の問いかけに深いため息を一つついてから、こう答えました。
「分からないよ。ただ、お父さんも見たことがあるんだ。あそこの道には石が立ってるだろう。あれはお墓なんだよ。誰のお墓か、何があったか分からないけど。」

その後、その道を通らないようにときつく言われましたが、言われなくてももう二度と通る気はありませんでした。
父の話では、一定の間隔で追いかけてくるだけでこっち近づきすぎることもないし、あの林から出てしまいさえすればそれ以上は追ってこないそうです。

ただその道の入り口の前は、それからも通学や出かける時にどうしても通らなければならない場所で、林の中に目をやると、たまに白くて背の高い人影が立っているのです。
ごく稀でしたが、道の出口のすぐ側までそれが出てきていることもありました。
私はそんな時、父に言われたようにすぐに目をそらし、そのことを考えないようにしました。

私はもう長らく実家には帰っていませんが、帰れば、また目にすることになるんだと思います。

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