総合病院で勤務しながら、准看護婦の資格を取った。そして今度は正看護婦の資格を取るために、病院で働きながら県立高校の定時制高校に通って、高卒資格を取った。
 准看護婦として勤務していた79年頃、Xさんの弟がオートバイ事故を起こし、総合病院に入院した。そうしてM子はXさんと出会い、交際を始めた。M子は彼の勧めで「大山祇命神示教会」に入信するようになった。しかし、Xさんの音楽活動が忙しくなってくると、教会に足が遠のき、会費滞納で脱会となった。
 86年4月、XさんとM子は結婚。Xさんの実家で同居したが、病気のXさんの父親を看病するなど、仲良く暮らしていたという。


【救世の曲】

 86年10月、埼玉にいたSが帰ってきて、藤沢市のアパートを借りた。Sは幸せに暮らしていたXさんとM子の元へやって来て、「この世は悪魔でいっぱいだ。やがて、核戦争が起き、世界は滅亡するだろう」「悪魔を祓い、救世の曲を作れるのはお前しかいないんだ」「自分には神が降りた」などと2人に説き始めた。そうした教義は「大山祇命神示教会」にはない。Xさんはもちろん最初からその話を鵜呑みにしたわけではなかったが、「救世の曲」のことはずっと心に引っかかるようになった。

 テレビ出演も果たした87年、Xさんはバンドのメンバーに「救世の曲」のことを相談する。すでにその頃には解散話も出ていたため、メンバーとの離縁は決定的なものとなった。

「俺の部屋で曲を作れ」
 2月15日、Sにそう言われたXさんは藤沢のアパートにこもり、曲を作り始めた。SとM子も一緒である。バンド仲間やM子の両親が「もう帰ろう」と訪ねて来ても、彼らは耳を貸さなかった。

 2月19日、XさんとM子をSから引き離そうと、事態を深刻に見たバンド仲間やXさんの両親が3人と話し合った。そのなかで、M子は横浜の実家に戻るのがいいということになり、M子もその通りにした。M子の親は離婚するように言ったが、当のM子は「この世を悪魔から救わなくちゃ」とこぼすだけだった。

「ぼくにも悪魔が取り憑いた」
 Xさんがそう言い始めたのは翌20日のこと。M子も実家から舞い戻ってきた。

 2月22日、Sは「悪魔祓いの儀式」が始めた。
 2人はまずXさんの体に塩をすりこみ清めた。
 そしてSはXさんとにらみ合う。Xさんが目をそらせば、悪魔が出ていったということになるが、Xさんは目をそらさなかった。

「悪魔を追い出すに

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