何年も前に知人から聞いたお話。
何故だか鮮明に記憶に残っているので拙い文ですが、この場を借りて失礼します。

知人が小学校低学年の夏休みに祖父母の家に行った時のこと。だいぶ田舎なその地域には、周りには暇をつぶす遊具などなく、周りに同じ年頃の子がいない事もあり、一人山なり林なりを駆け回っていたそうな。

そんな時、竹林の中で人工物と思える小さな石塚を発見した知人。興味本位で調べて見ると、透き通った綺麗な石を発見した。彼はそれを持ち帰り、宝物にしようとした。
その晩、石を枕元に置き、就寝した彼は奇妙な夢を見た。ボロボロの服を纏った男性が此方をみて、何かを訴えている。
最初は特に気にしなかった知人だが、次の日も、その次の日も同じ夢を見た。しかも、だんだんとはっきりとしてきた夢を。
男性は所々焦げた日本兵の格好で、左腕が無かった。そして悲痛な、でも何処か優しげな顔でただずっと
「返してくれないか」
そう訴えていた。
怖くなった彼は翌日、祖父に相談した。最初は子供の冗談だと思い、取り合わなかった祖父だが
「綺麗な石を竹林で拾った日から見るようになった」
と知人が言った途端、祖父は驚いた顔でどんな石で竹林のどこで拾ったのかを聞いてきた。祖父の変わり身に同じく驚きながらも、知人は正確に答えた。
すると祖父は何かを考えるように黙り込んで、暫くして
「今から一緒にその石を戻しに行こう」
そう言って外にでる準備をし出した。

塚までの道中、知人は祖父に石について尋ねた。曰く、昔この土地に住んでいた男性の遺品なのだそうだ。男は赤紙を貰い、家族を残して戦場へ行き、そのまま帰らぬ人なった。男の帰りを待つ妻と娘も病死し、その一家を哀れに思った周辺の人々は墓代わりに石塚を作り、男が大切にしていた、娘からのプレゼントである石を供えて埋葬したそうな。

石塚に着き知人が石を戻すと祖父は彼に
「これはな、離れてしまった親しい人を繋ぐ大切な物なんだ。悪気は無かったのだとしても、キチンと謝りなさい」
そう言って彼の頭を下げた。

一安心した知人が塚を離れ、帰ろうとすると、祖父がジッと塚を見つめて動かないのに気が付いた。不思議に思った彼は祖父に近づくと祖父が
「そうか、お前、帰ってこれたか。△△も□□もずっと待っていたんだぞ」
そう呟いて、涙を流していた。

その晩から知人はあの夢を見なくなった。ただ、寝入る直前に
「驚かせてすまなかった。ありがとう」

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コメント(1)

不謹慎だとは思いますが、素敵なお話だと思います。

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