に彼に面立ちがよく似ていた。

そして僕の母親がきにしていたのは、彼の体の小ささだった。
当時そんな言葉は一般的ではなかったが、母親が心配していたのは、育児放棄についてだった。
そして恐らく母親のその推測は、当たっていたのだろう。
彼の身長は二つ離れた僕の弟より小さかった。
たぶん、彼の小ささは育児放棄による成長不良のせいだったのだろう。

「可哀想でほっとけないのよ」

母親はそう言うと、涙ぐんでそれ以上なにも話さなかった。

それからも僕と彼とは兄弟のように過ごしていた。
家で食事を取り始めたせいか、彼の体も月日が経つにつれて徐々に大きくなり、活発な面も見えるようになってきた。
そうなると僕と彼はプロレスごっこをして遊ぶようにもなり、更に仲良くなっていった。

彼とはいろんな話しをした。
とはいえ、兎に角彼はいつまで経っても無口で、殆ど僕ばかりがしゃべっていたのだけど。
そんなある日、彼が不思議な事を口にした事がある。
それは学校帰りに僕の家に二人で向かっている最中の事だった。

突然彼は商店街の店と店との隙間を見つめて立ち止まり、なにやらぶつぶつと呟き始めたのだ。
「あかんねん。いやや。行きたないねん」
彼はそんなことを隙間を見つめながら呟いていた。
不思議に思って僕も隙間を見てみたが、子供の僕でも通れそうにないほど狭い隙間には、ただ影で薄暗い空間が細く伸びているだけだった。
「なあ、どうしたの?」
僕が彼の肩を掴むと、彼はびくりと体を震わせた。
振り向いた彼の顔は真っ青で、僕が途惑いながら彼を見つめていると、彼は殆ど小走りに近い早足でその場を離れた。

商店街を抜け、僕の家の近くの公園に辿り着いた辺りで彼は足を止めた。
「ちょっと、待ってよ。なにかあったの?」
追いついた僕が彼に声をかけると、彼は「誰にも言わんって約束してくれる?」と言ってから、話し始めた。

「実はな、僕、時々変なもんが見えんねん」
「変なものって、なに?」
「あんな、僕な、家とかお店とか建物の隙間に、人か挟まってるのが見えんねん」
「え?」
「僕はな、隙間人間ってよんでる。でな、あいつら、僕を時々隙間に誘ってくるんや」
「それって、お化け?」
「分からん。でもな、隙間人間って、みんな優しそうな顔してるんや。だから多分お化けやないよ」
「意味がわかんないよ」
「僕かて、分

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コメント(9)

一人っ子のはずがいつの間にか弟いるんだが?

主人公は一人っ子のはず… でも、二つ離れた僕の弟よりも 彼は小さい… 弟も隙間に行ったの・?

長! お疲れ様です!

何か読んだことあるような

え、死んだの、投稿者さん

切ない

この話面白い。読み入ってしまった。友達が不憫でしょうがないが。

自分から隙間に入っても幸せにはなれん

隙間にいる人、見かけたことある人が怖がっていました。 隙間にいた人、偉い人らしいです。お金に困っているようで、偉い人がお金に困っていると、 普通の人の生活もこれからもっと大変になるかもしれないと思いました。

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