烈な生臭さに気付いた。
犬は海の方に向かって牙を剥き出して唸り続けている。
普段は大人しい奴なのだが、いくら宥めても一向に落ち着こうとしない。
友人も起き出して闇の先に目を凝らした。
月明りに照らされた海は、先ほどまでとは違って、気味が悪いくらい凪いでいた。
コンクリートの殺風景な岸壁の縁に蠢くものが見える。
「なんや、アレ」
友人が掠れた声で囁いた。
「わからん」
それは最初、海から這い出してくる太いパイプか丸太のように見えた。
蛇のようにのたうちながらゆっくりと陸に上がっているようだったが、不思議なことに音はしなかった。
と言うより、そいつの体はモワモワとした黒い煙の塊のように見えたし、実体があったのかどうかも分からない。
その代わり、ウウ…というか、ウォォ…というか、形容し難い耳鳴りがずっと続いていた。
そして先ほどからの生臭さは、吐き気を催すほどに酷くなっていた。
そいつの先端は海岸沿いの道を横切って向かいの家にまで到達しているのだが、もう一方はまだ海の中に消えている。
民家の軒先を覗き込むようにしているその先端には、はっきりとは見えなかったが明らかに顔のようなものがあった。
オレも友人もそんなに臆病な方ではなかったつもりだが、そいつの姿は、もう何と言うか「禍々しい」という言葉そのもので、
一目見たときから体が強張って動かなかった。心臓を鷲掴みにされるってのは、ああいう感覚なんだろうな。
そいつは、軒に吊るした笊をジッと見つめている風だったが、やがてゆっくりと動き出して次の家へ向かった。
「おい、車出せっ」
友人の震える声で、ハッと我に返った。

動かない腕を何とか上げてキーを回すと、静まり返った周囲にエンジン音が鳴り響いた。
そいつがゆっくりとこちらを振り向きかける。
(ヤバイっ)
何だか分からないが、目を合わせちゃいけない、と直感的に思った。
前だけを見つめ、アクセルを思い切り踏み込んで車を急発進させる。
後部座席で狂ったように吠え始めた犬が、「ヒュッ…」と喘息のような声を上げてドサリと倒れる気配がした。
「太郎っ!」
思わず振り返った友人が「ひぃっ」と息を呑んだまま固まった。
「阿呆っ!振り向くなっ!」
オレはもう無我夢中で友人の肩を掴んで前方に引き戻した。
向き直った友人の顔はくしゃくしゃに引き攣って、目の焦点が完全に飛んでいた。
恥ずか

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コメント(5)

家内の中にある人の気配を探して行動してる可能性もあるな。つまり、遅かれ早かれ車も覗くつもりだったんだろうから車を出したの良い判断じゃないか?

魔除け(?)の品がないから、見つかるのは時間の問題だったとか?

前も読んだけど きみ悪い話ですね

気づかれてないのになぜ車を走らせたのか分からん。犬がかわいそう。

犬が吠え続けてたので気づかれるのは時間の問題だと思って発進したのでしょう。

ぷろむさんの投稿(4)

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