社会人7年目にして会社を辞め、東京から実家のある町に帰って来ました。

実家から通える会社に何とか転職し、電車で50分の距離を毎朝通うことになりました。
東京の満員電車にくらべると地元の通勤電車に窮屈さは感じません。
しかも始発駅に近いため、朝は必ず座席に座れるのがささやかな幸せでした。

ある朝の通勤電車でいつものように座席に座ってうとうとしていると、右肩にずしりと重みを感じました。横目で見ると白髪混じりの髪を刈り上げた黒い上着のおじさんが私の肩にもたれかかっていました。
膝に分厚いナイロンのカバンを乗せ、両手で抱えています。

このおじさんには見覚えがありました。

私はいつも同じ時間の同じ車両に乗っていたため、いつも乗ってくるメンバーの顔は自然と覚えていました。茶髪を束ねた女子大生、あまり見たことない賢そうな制服を着た小学生、いつも同じ上着を着ているお兄さん。

そのおじさんは私より前の駅で乗って、いつも分厚いナイロンのカバンを膝の上にかかえて寝ています。
寝ていて倒れ掛かってるんだなと思い、気にせず目を閉じました。
右側からおじさんの柑橘系の甘いポマードの香りがしました。

しばらくすると、今度はドスンという何かが落ちる音がしました。
直感的におじさんがカバンを落としたんだと思った瞬間に、今度は私の腕の上にズシリと何かが落ちる衝撃がありました。

驚いて目を開けると、私の右腕の上に隣のおじさんの手がありました。足元には分厚いナイロンのカバンが落ちています。
とっさにおじさんの方を見て、私は息を飲みました。

おじさんは座った状態のまま上半身が仰け反るようになり、白目をむいていました。口がだらしなく開き、目の周りが異様に赤くなっていました。

ただ事じゃないと思いとっさに立ち上がった瞬間、おじさんは私の座っていた方に倒れ込みました。
体が痙攣しています。
車両内は騒然となり、誰かが緊急ボタンを押したようでした。
おじさんは次の駅で救急隊員に運ばれていきました。

仕事が終わり、帰りの電車のなかで今朝の出来事を思い出していました。

「あのおじさん大丈夫だったのかなぁ」

次の朝、いつもの電車に乗るとあのおじさんはいませんでした。
次の日も次の日もおじさんは乗って来ません。
気にはなっていたのですが、ちょうどその頃から転職先の会社での仕事が忙しくなり、今までよりも早い時間の電車に乗らなくてはいけなくなったため

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コメント(5)

なんだ、作話か

まぁ、不可抗力だけど 事故にでもあったと思って 憑かれるしかないな

怖かった。よくできている。

思い込みってすごい。冷たい鉄で火傷するくらいだからね。

やっぱ取り憑かれると離さないもんね

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