友人に家が酒屋の子がいた。同級生だったんだけど、その友人の父がちょうど僕が高校生の頃に亡くなった。どんな亡くなり方をしたかというと、夏まつりの神輿の屋根に載っているときに、つぶれてしまったんだ。運の悪いことに、神輿がバランスを崩して、電信柱にぶつかってしまったから。その日はお天気がよくなくて、神輿は大きな商店街を練り歩いていたんだけど、神輿がぶつかったことに気付く人はほとんどおらず、そのまま神輿は商店街を10往復はしたんだ。そのうち、マンションの高層階の住人が神輿の屋根の異変に気付いて、救急車を呼んだんだ。そして、救急車が来た時には…神輿の上に載っているのは赤い肉の塊だった。すでに形をなしているとは言えない状態で大変悲惨なものだったんだ。どうして担ぎ手は気づかなかったのか。これが不思議でたまらない。まわりにも、何千人という見物の人出があるのにさ…。それで、この関東の村のルールだと、一年間はそこの氏子は神輿を担げないルールになっている。だから、翌年は休まなければならない。
本当に怖いのは、これからなんだよ。亡くなった友人の父のせいで、神輿がかつげなる、それは、氏子にとって非常に遺憾なことなんだ。だから、あわてて葬式を済ませて、納骨し、保険金が出たのを見計らって、村は寄付をさせるんだよ。わび料として。それから、一年間みっちり村から村八分にされて、お年寄りから子供まで、みんなからいじめられるんだ。そういうきまりなんだよ。祭りのあるこの村の土地ではそれが伝統なんだ。いとこに聞いたけど、「それが掟だ」って言って、10代の小学生もいじめに加担するんだぜ。年長のおばあさんに筆舌につくしがたい嫌がらせが集団で平気でできるんだぜ。怖いよ。
ほどなく、友人の家は酒屋をたたみ、首をつった。一家で。おばあさんとおかあさんと妹と友人。それからどうなったと思う?友人の家はなぜか村の第二会館になって、今日も神輿のお囃子の練習に氏子たちが集まっている。でもさ、僕、見えるんだよ。未だに神輿の屋根に赤い塊がぼんやりと浮かんでいるのが…。だんだんその赤い塊には目があるのに最近気が付いたんだよ。次はどこの家がターゲットなんだろうな。村は存続しなくてはならんからな。

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Comment(3)

語り部が淡々としているのがなんだかなー

神輿に潰されたなら、事故ですよね? それで村の掟っておかしくないですか? 他にも読んでて矛盾点がたくさん…

神輿に潰されたって話し?

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