大正6年生まれのヤケに身軽な老婆は、やはりこの世の者ではありませんでした。
老婆の霊に拉致され、遠回しに金品をせびられた、鬼気迫る恐怖の実体験です。

1.捕捉
数年前のX月Y日、勤め帰りに飲み屋を2軒ハシゴした私は帰路の電車を乗り過ごし、一つ先の駅で下車する羽目になった。
一駅分といっても大した距離でないので、私は電車を使わず住宅街の細い路地を伝って歩いて自宅に向かった。
寺院が密集するエリアに近づくと、民家の2階に明りが点き、能面が浮いているのが見えた。
酔いは醒め、心の中で心霊検知メーターが自動で起動、心霊可能性90%以上を示し、赤く点滅し始めた。
私は下を向き、その民家を足早に通り過ぎようとした。

そこへ「あの~、ちょっとお話聞いていただけませんか?」と声が掛かった。
意思に反して私の足は止まってしまった。
恐る恐る振り向くと、能面に見えたのは丸顔の老婆であった。
心霊検知メーターは点滅を止め、針は70%を前後した。
この老婆は生きてる人で、トイレの電球が切れて自分で交換できないとかの事情で、通行人に助けを求めているのかもしれない、と私は思い始めた。

2.連行
私は老婆に言われるまま、その古びた民家に招じられた。
1階は老婆がスイッチをひねっても電灯は点灯せず、私の心霊検知メーターはは80%以上にハネ上がった。
老婆は弾むように階段を昇って2階の部屋に私を案内した。
部屋は適度に散らかって生活感があり、廃墟という感じはしなかった。
仏壇のような家具があったので、老婆がどこかへ書類を取りに行ってる隙に中をあらためた。
本当は老婆自身の位牌・遺影・遺品が入っていたのかもしれなかったが、
そのときの私には、何も入っていないようにしか見えなかった。

戻ってきた老婆は四つ折りの国民健康保険証を示し、大正6年生まれのAと名乗った。
そして遠くを見る目で「どこからお話しましょうかねえ・・・」と嘆息し、語り始めた。
照明器具の薄暗い光に照らされたその姿は、心霊再現ドラマから抜け出たようであった。

3.にゃまえを変えろ、にゃまえを変えろ
老婆Aはとある老人ホームに通園しているが、職員たちに「名前を変えろ、名前を変えろ」と執拗に迫られ、名前を変えた。しかし名前を変えたら元の名前の貯金通帳からカネを下ろせなくなって困った。
そこで元の姓に戻したが、老人ホームの職員たちに改名を迫られている。
でも改名すると貯金が下ろせな

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