可愛がっていた黒猫がいました。

日本猫のように 丸い顔 丸い尻尾では無く 細身の顔と長い尻尾。

赤い紐に鈴を付け 首輪にしていました。

黒猫が動く度に チリリーン チリリーン と高く鈴の音がしていました。

いつも 私の側に居て何処にでも 付いて回る そんな 黒猫でした。

その黒猫は 他の猫たちと少し違っているところがありました。

殆んど食事をしなかったのです。

キャットフードをお皿に入れ 置いていても 食べていないので また 新しいものと入れかえて 置きますが……

やはり 食べませんでした。

魚もお肉も色々な ウェットの餌も試しましたが 一口程度口に入れるだけでした。

病気を疑い 病院に連れていきましたが 何処にも異常は見られませんでした。

食事を取らないだけかと 思っていましたが……

水を飲んでる姿を見た事もありませんでした。

黒猫は元気です。

ボール遊びが大好きでした。

ネズミのおもちゃには見向きもしませんでした。



その黒猫との出逢いは 土砂降りの雨の中でした。

橋の袂で 小さく身体を丸め震えていました。


………そう言えば この子が鳴いた声を聞いた事がなかった事に 気付きました。

黒猫は 鈴の音を響かせながら 私にすり寄って来ます。

チリリーン チリリーン……

黒猫は 毎日 同じ場所に座っていました。

お気に入りの場所だった様です……でも その場所は………。











亡くなった娘の仏壇の前でした。

娘の写真には 首に赤い紐に鈴を付けた 黒猫が写っています。

今いる この黒猫と同じでした。

黒猫を抱き上げると いつも フワッとミルクの匂いがしました。

ミルクなど あげていないのに……

黒猫は 抱っこが好きで 何時間抱いていても 嫌がる素振りを見せませんでした。

チリリーン… チリリーン…

リリリーン…リリリーン…

ジリリリリーン…ジリリリリーン………。


遠くで電話がなっている 音がする…。

黒猫を抱いていた腕には 何も居ない…。

黒猫を探して 家の中を走り回る。

そうだっ !! 仏壇……娘の…‼


仏壇の前に 黒猫はいませんでした。

変わりに 赤い紐に鈴がついた首輪が置いてありました。

それに手を伸ばして 何気なく仏壇の写真に目を向けると……




チリリーン…チリリーン…チリリーン……











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Comment(5)

何だか切ないお話です。いつも紫雲さんの作品を 読んでいますが、どれもとても良いお話です。

ものすきの…さん。コメント有り難う御座います。 面白いですか?ありがとう御座います。 機会があればまた投稿致しますね(*^^*) 【 名前の入力でエラーが出てしまいましたので…ひらがなですみません。 】

まぁろさん。 コメント有り難う御座います。(*^^*) とても嬉しく思います。

とても良い話です!面白いですよ。

良いお話しでした。

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