今から約15年程前の話。
当時、早く就職をしたかったのでデザイン系の専門学校へ通ったものの、中退してしまった。
2年制の専門学校に1年間通ったが、自分の芸術センスの無さを痛感し、そのまま就学しても就職は厳しいと思ったからだ。

19歳で今まで成績は中くらい。
特にこれといった得意なこともない、ただの男。

これからどうしよう?と悩んでいるうちに季節が1つ過ぎ、ずっと答えの出せない俺を見て母親も我慢できなくなったらしい。

「とりあえず、一人暮らしを始めて自立しなさい。」

その言葉から半ば強制的に一人暮らしをすることとなった。
今までずっと親に甘えて生活してきたので、不安しか無かった。

都内某所、13階建てのワンルームマンション。
エントランスにオートロックのついた物件だったが、家賃が5万円と場所にしては非常に安かった。
不動産のこと等、何も分からない俺は親が進めるままにその部屋に決め、入居することとなった。

部屋は電気コンロが1口(IHではない、ぐるぐる巻きのコンロ)、備え付けのドラム式洗濯機があった。
恐らく、都内に単身赴任をするサラリーマンが利用するには丁度いい物件なのだろう。

とりあえず、生活費を稼がなければならない。家賃が払えなくなってしまう。
状況を選んでいる余裕は無かった。
アルバイト雑誌をコンビニで購入し、自分にできそうなアルバイトを探すことに。
幸いにも高校の頃にアルバイトはしたことがあったので、不安は無かった。

きっとアルバイトで生活しているうちに、将来的に自分は大丈夫なんだろうか?
そちらの不安の方が出てくるんだろうな、と予想していた。

順調にアルバイト先も見つかり、ようやく生活が動き出した。
不思議なことに「これからどうしよう?」とずっと悩んでいる時よりも、とりあえずアルバイトをして生活している今の方が精神的に楽な気がした。

少しずつ生活が馴染んできた頃、今まで気にならなかったことが気になるようになった。
今までは直近の生活ができるだろうか?という不安が強くて、それしか頭に無かったのだが、心に余裕が出てくると周囲の変化に意識がいくようになるのだ。

違和感その1、部屋に誰かが居るような雰囲気がする。
アルバイトから帰宅すると、部屋に誰かが待っている錯覚があった。
もちろん、一人暮らしなので、そんなことはない。
そんな錯覚を感じるのは、ドアの前に立って鍵を開けて中に入るまでの間だ

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Comment(2)

自分の事のようにドキドキして拝読。二人とも死ななくて良かったです。死んでしまってもただの事故で済まされてたから…

大作だったけど結局女と子供の正体は分からず仕舞いか残念

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