示していた。

子供サイズの人形にはぎょっとしたが、意外に無気味な感じはしなかった。

個人から借り出された雛人形も
状態がよく、大切に扱われていた事が分かる。

会場の中央には畳を二枚敷いた段があり、その奥の雛壇にも人形が並べられていた。

雛壇の前は空間があるが、
通り抜けられる程の幅はない。

俺は何の気なしに、
左側から雛壇の方へ近寄った。

すると、雛壇まで1メートル弱の所で異変が起こった。

頭が、くん!と後ろに引かれた。

自分の意思とは関係なく、
首が左に向く。

喉が詰まる感じがして息苦しい。

何だこれ?
と逆らって前を向くと、また
くうう…っと左を向いてしまう。

試しに一歩下がってみると、
首も戻るし呼吸も楽になった。

俺は畳の敷かれた段をぐるりと
半周して、今度は右側から雛壇に向かってみた。

……何でもない。

前を向いたまま、息苦しくもならず、びっしりと人形の並んだ壇に近付けた。

俺は引き返して、
もう一度時計まわりに段を回る。

同じ場所で同じ様に、首が回る。
息が詰まる。

これは何だ?

逆に回る。何もない。

目の前には何の変哲もない雛人形が、ただ無造作に並んでいるだけ。

怪しくないし、嫌な感じもしない。

でも、向こう側…
雛壇の左寄りに、一つだけこの場に不釣り合いな人形がある。

雅びな彩りの人形の中に、やけに鮮やかな水色とレモン色が見えていた。

何故だかそれを確認したい気がして、俺はもう一度左へ回る。

今度は手前で立ち止まり、
離れて観察した。

948: 時計まわり3/4 ◆BxZntdZHxQ [sage] ::2008/04/29(火) 21:38:26 ID:6CNjdJyS0
それは、水色のサテン地にレモン色のフリルのドレスを着た人形だった。

大きさは15センチ位、
普通の女児玩具の様だ。

リカとかジェニー?とかみたいな可愛らしいアニメ顔ではなくて、
睫毛の長い濃い顔を、正面より
ややこちらへ向けている。

俺は拍子抜けした。

何か物凄いモノがあるんじゃないかと思ったのだ。

どれだかの人形の写真を撮りたいと言う従弟を残して、俺は建物を後にした。

建物を出ると坂は右に折れ、先刻上がって来た石段の中程に出る様だ。

俺は木立の中の石畳を道なりに下る。

ああ、これも時計まわりなんだな…とふとさっきの事が頭を過っ

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