仕事帰りの深夜、駅を降りて家路を急いでいました。

終バスは既に行ってしまったので仕方なく歩いていると運悪く雷雨になってしまいました。

道端で雨宿りついでに一服していると1台の黄緑色のタクシーがゆっくりと走ってくるのが見えたので、すかさず手を上げて停めました。この辺りはド田舎で流しのタクシーなんか滅多に見かけないのでラッキーでした。

車内に乗り込んだ瞬間、濡れていたせいでしょうか? 猛烈に寒気を感じました。

「このまま〇〇町まで真っ直ぐ行って下さい」

「…ハイ」

「次の信号左です」

「...ハイ」

返事に全く覇気が無く、どこか具合でも悪いのかなと思いました。

家の近くまで来たので料金を支払おうとすると運転手がボソッと言いました。

「カエリミチ...ダカラ...イリマセン」

なんか不気味な運転手でしたがとりあえず礼をして車を降りました。

家に着いて鍵を出そうとした時、タクシーの中に手提げ袋を忘れたことに気が付きました。

幸いタクシー会社と運転手の名前を覚えていたので調べて連絡することにしました。載っていた電話番号にかけると若い男性が出ました。


私 「〇〇駅の近くから今乗って来たんですけど手提げ袋忘れてしまって...」

男性 「少々お待ち下さい.........調べているんですがお客様のエリアにうちのタクシーは1台も走ってないですね」

私 「確かに〇〇タクシーで運転手は〇〇さんです 黄緑色のタクシーです」

男性 「黄緑ですか!? 確かに以前は黄緑の車両でしたが数年前に変更しました 現在その色の車は使用していません 〇〇という運転手も在籍してないのですが...上司に代わりますので少々お待ち下さい」

しばらくすると年輩の男性に変わりました。

「〇〇は10年以上前まで確かに在籍しておりましたが既に離職していますので私共でも対処しようがありません」

訳が分からないのでもう一度乗った時の状況を詳しく説明すると年輩男性は静かに話し始めました。




「大変申し上げにくいのですが 〇〇は当時病死しておりまして その後もお客様の様な問い合わせが度々あるんです」




私の手提げ袋 どこへ行ってしまったのでしょうか?

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