体験者の言葉通りに書きます。

その旅行代理店は、私が通勤する道筋に有り、5階建ての古いビルの4階にありました。
27歳の事務職のOLである私は、その夏の長期休暇を海外で過ごすため、その旅行代理店で手続きを取りました。
手続きを終えた数日後、『書類の不備があったので、もう一度ご足労願えないか』という電話が有り、もう一度そこへ足を運ぶことになったのです。
電話のあった翌日、私は仕事帰りに旅行代理店に行くつもりだったのですが、急な仕事を頼まれてしまい、結局、会社を出たのは夜の10時を過ぎたころになってしまいました。
代理店の営業時間はとっくに過ぎていたので、寄るのはまた明日にするつもりでした。
けれども、途中、代理店の入っているビルの前を通りかかると、ビルの4階に明かりがついているのが見えたのです。
『もしかしたら誰かが残業しているのかも知れない』と思った私は、試しに代理店に顔を出してみることにしました。
普段私は、健康のために階段を使うように心掛けています。
当然、この旅行代理店にきたときも、いつもは階段でした。
しかし、その日は残業で疲れていたので、エレベーターで4階へ上がることにしました。
初めて乗ったエレベーターは、表示ボタンは手垢で汚れ、天井の明かりも薄暗く、一瞬、乗り込むのがいやになりました。
それでも疲れには勝てず、私はしぶしぶ乗り込むと、4と表示されたボタンを押しました。
ようやく4階に着き、ドアが開くと、目の前の壁に大きな赤い字で、『4』と書かれているのが目に付きました。
『あら、前に来たとき、こんな表示があったかしら』と、ちょっと不思議に思いましたが、深く考えずに、私はエレベーターを降りました。
廊下の電気は消えていて、廊下には物音ひとつ、話し声ひとつ聞こえません。
事務所の電気がついているだけで、誰もいないのかも……と、私は不安になってきました。
代理店のガラスのドア越しに覗いてみると、受付カウンターの向こうに人が座っているのが見えました。
私はホッとして、ドアを押して中に入りました。
ドアから一歩なかに入ると、なかの空気は鳥肌が立つほど冷えきっていました。
「あの、すみません……」
と声を掛けると、カウンターの向こうの男の人が、顔をあげてこちらを向きました。
ひどく痩せて、青黒いような不健康な顔色をしていました。
彼は黙りこくって、どんよりとした目付きで私をじっと見ています。
私はなんだか気味

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