僕の知人が体験した話です。
その人はダイビングが趣味で、世界中のいろんな場所でダイビングをしているそうです。


彼女がサイパンの海でダイビングした時の話です。


皆さん聞いたことがあるかもしれませんがサイパンにバンザイクリフという場所があるのを知っていますか?
戦時中、敵兵に追い詰められた人々が「天皇陛下、万歳!」と叫びながら飛び降りた場所です。
たくさんの方々が亡くなられた場所であると同時に、いろんな魚に出会える有名なダイビングスポットになっているみたいです。


彼女はその日、このバンザイクリフ付近の海でダイビングをしていました。
サイパンの海はとても綺麗で、ダイビングを心から楽しんでいたそうです。


すると静かな海の中で、ふいに…





パチン…






パチン…





という音が聞こえてきたそうです。
『何の音??』
と思った彼女でしたが、注意を向けると音が自分の背後からしていることに気付きました。


僕はダイビングの経験が全く無いのでよく分かりませんが、ダイビング装備のボンベには水中で何か不測の事態があった時に周りに知らせるために、引っ張って「パチン」とボンベにぶつけて音を出すヒモ?突起物?のような物があるそうです。


その音が自分のボンベからしていたそうです。


ハッとして見ると、おかっぱ頭の小さな女の子が彼女のボンベのひもを引っ張っては


パチン…


パチン…


と音を出していたそうです。


思わぬ事態にパニックになったそうですが、さらに女の子は彼女と目が合うと
「おかあさん…」
と言ったそうです。


彼女はこの話をした時に、女の子が口を開けた時に泡がボコボコッと出たのが印象に残っていると言っていましたが、僕としては水中でも喋れるんだ…と思ってしまいました。


一層パニックになった彼女は慌てて浮上したそうです。


こんな体験をしながらも彼女はそれからもサイパンの海に度々潜っているそうです。



すでに書きましたがバンザイクリフは実際に多くの方が亡くなり、大変悲しい出来事があった場所です。
そんな方々の無念の想いを怪談として紹介するのは不謹慎なことだと思うかもしれませんが、そうした方々の悔しさや悲しみがあの海にまだ留まり続けているということを知って頂くという意味でもこの話を書かせて頂きました。

通常版で読む