僕の先輩が体験した話です。
その先輩はH県の出身なのですが、子どもの頃には近所に防空壕の跡がいくつかあり、時々中に入っては遊んでいたそうです。

そんな防空壕の中に、先輩の祖母から絶対に行くなと言われていた防空壕があったそうです。
しかし小学生だった先輩は友人二人と放課後にその防空壕に行ってみないかという話になったそうです。

実際にその防空壕に着いてみると、祖母の話があったせいか、とても薄気味悪く入るのをためらいましたが、友人の一人のU君が「俺、行ってくる」と一人で入っていったそうです。
「すげー、勇気あるな!」と言いつつ、残された二人は防空壕の前で待っていました。
ところがしばらくすると中からU君の悲鳴が聞こえたそうです。そして防空壕からU君が走って出てきました。
すでにびびっていた先輩はそれを見て、後ろも振り返らず走って逃げたそうです。

翌日、学校でU君に会った先輩は「昨日はごめん」と謝った後で「何があったの?」と聞いてみました。
しかしU君は「え?…別に」と言って何があったかを話さなかったそうです。
先輩も「いや、別にじゃなくて!」と何度も聞いたのですが、どれだけ問い詰めてもU君は決して話しませんでした。


数ヵ月後U君は転校することになり、先輩も防空壕での出来事は段々と気にしなくなっていきました。
それからしばらく経った頃…


U君が亡くなったということを知りました。
H県H市の川のそばで変死体で見つかったそうです。
テレビのニュースにも新聞にも載ったそうです。

先輩の頭の中にはあの日の防空壕での出来事が甦ってきました。
実際に防空壕での事がU君が亡くなったことに関係しているかは分かりませんが、先輩は「絶対にあそこで何かあったと思うんだよ…」と言っていました。

その防空壕が今でも残っているかは分かりませんが、H県にお住まいの方はお気をつけ下さい。

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