中学の夏休みに塾の合宿で、県だか市だかが経営する宿泊施設に泊まった。

男8人で一部屋に泊まった。半分は同じ中学のやつら。残り半分は他校。

そこの施設は市内の小中高御用達で、施設にまつわる怖い話がいくつかあった。

自分が通ってる中学は学年に2クラスしかない小さな中学だったからかあまりネタがなかったが、他校のマンモス校に通ってるやつは沢山の話を仕入れてきていた。

2泊3日の合宿で、そいつにはビビらされっぱなしだった。
俺はちょっと悔しかったから、自宅に電話して5歳上の兄に何か怖い話ないか聞いた。
兄は渋りながらも、これは自分の代に頭がおかしくなったやつが出たから、絶対にやらないようにと担任からお達しがあったやつだけど・・・と話してくれた。

まず、その部屋に泊まるメンバー全員で円形に座る。
そして1人ずつ怖い話をしていく。
最後のやつの話が終わったら「せーの」で部屋のどこかを指差す。
全員同じ方向を指差していたら、そこに幽霊がいる。って話。

兄はやったことがないけど、見ただとか頭イかれたやつが出たとか当時は話題になったらしい。

そしてやっちゃったんだよ。リアル厨ニの俺は・・・。

結果は、出たんだ。出たんだと思う。
「せーの」で指差した方向は偶然にも一緒だった。
部屋の入り口の横にある備え付けの金属製のロッカー。そこをみんな指差したんだ。

その瞬間、そのロッカーがカタカタ動いて、部屋の中をこだまするような女の笑い声。
みんなそのロッカーから目を離せなかった。
カタカタが止まり、少しホッとした空気になったのも束の間、ロッカーの戸の隙間から真っ黒い髪がスルスルと出てきたんだ。俺たちめがけて伸びるように。

そこで俺は意識がとんだ。
目が覚めた時は朝になっていた。

みんなその場で眠っていたようで、俺以外2人はすでに起きていて放心状態であぐらかいていた。
その1人(Mとする)はロッカーを向いたまま「あれ、なんだったんだろう。夢じゃないよな。」と独り言のようにつぶやいた。
俺はMを見てハッとした。Mの首には紐で締めたような赤い跡があった。その首どうしたんだとMに聞くと「髪が伸びてきて首に巻きついた。苦しいのと怖いのとで気を失った。首、変か?」と首を触りながら答えた。
俺は自分の体を触って異常はないか確かめた。洗面所に走って行って首も見たがどうもなかった。他のみんなもどうもなかった。Mだけだった。

合宿も終わり

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