俺の友達の話。

そいつが中学生だったときの話で、ある日そいつは家で一人で留守番していたそうな。

季節は冬、時刻は夕方5時半くらい。まだ多少明るいけど、日は落ちて急速に辺りが暗くなっていく。

自宅のリビングで勉強していたそいつは、外が暗くなっているのに気づき、ふと手を止めた。


そのとき、そいつの家の2階、リビングの真上の部屋から足音が聞こえたそうな。


家には当然そいつ一人。おかしいな、と思ったけど、集中して勉強してたし、誰か家族が帰ってきたのに気づかなかっただけかも、と思い、また勉強を再開した。

足音はまだ聞こえてくる。





どれくらい経っただろうか、ふと、そいつは違和感に気づき、また勉強の手を止めた。


さっきからその足音が止まる気配がない。

普通家の中をこんなに歩き回るか?しかも自分のいるこのリビングの真上の部屋の中だけを。



途端に気味が悪くなってきた。
さっきからずっと聞こえているこの足音の正体は、よくわからないけど生きている人間ではない気がする。

そして恐らくだけど、このまま足音を無視してリビングで勉強を続けてたら、もっと恐ろしい目に遭う気がする。

そんな気がしたそいつは、家の鍵を持ってゆっくりと玄関へ向かった。
足音は相変わらず聞こえてくる。





廊下に出ると、足音が先ほどより鮮明に聞こえてくる。おそらくこの足音の主がいると思われる部屋のドアが開いているのだろう。

そいつの家は、玄関を入ると正面に壁、その壁を左巻く形で廊下があり、その廊下の先、ぐるりと回ったところに階段がある。

その階段を上ると2階なのだが、2階に上がった真正面の部屋が、リビングの真上の部屋である。
その部屋のドアが開いているということは、今2階へ上がると確実にそいつと鉢合わせすることになる。

友達はゆっくりと、この得体の知れない何かに、自分の存在を悟られぬよう、玄関へ近づく。

足音は依然、聞こえてくる。先ほどリビングにいたときより、よりリアルに聞こえてくる。

同じ建物、同じ空気の中に、この不気味な何かと自分が同居しているというのがとてつもなく怖い。はやく逃げ出したい。

しかし急いてはことを仕損じる。友達は早く逃げたい衝動を一生懸命おさえ、玄関に到着。靴を履き、逃げ出す準備は万端に整った。

そしていざ、鍵に手をかけ玄関を飛び出そうとした瞬間、





ドドドドドドドドドド!!


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