高校の時の先輩から聞いた話。

先輩が高校一年の時、クラスに転校生がきた。
底抜けに明るく、人見知りしないそいつと先輩はすぐに打ち解けたらしい。

ある日、先輩は友達を何人か連れてそいつの家に遊びに行った。
そいつの家は市営の団地に越してきてたそうな。

この団地、とてつもなく古く、外観は
ボロボロで廃墟のようになっている。
所々ひび割れ、雨で退色し、塗装は剥がれ落ちている。

過去に学生が部屋で首を吊ったなどの事件もあり、見た目の雰囲気も相まって、幽霊団地と呼ばれている団地だった。

そんな団地の一室にそいつは越してきていた。

部屋にあがるとまだ片付いてない段ボールがいっぱいある。

何か飲み物を、と転校生が部屋を出ていったあと、床に座って一息ついた先輩は、なんだか妙に気分が落ち込んでいることに気がついた。

他の面々も同様に渋い顔をしている。どうやらみんなもなんだか気分が悪いらしい。

幽霊団地だからだろうか。部屋もたしかに古く、壁は黒ずみ畳は赤茶けている。なんとなく暗い。

そのうち段々と気分が悪くなってきたそうな。


「なんかここ、気持ち悪くねえ?」


と先輩が言うと、みんなうんうん、と頷く。

「気持ち悪いよな。なんか。」「何が気持ち悪いんだろうな」と口々に皆で語る。

で、話の流れでみんなで気持ちが悪い原因になっていると思われるものをせーので指差そう、という流れになった。



「いいか、いくぞ、せーの。」



全員が同じ場所を指し示した。


それは押入れの天袋(押入れの上についてる小さい押入れみたいなスペース)だった。

同じ場所を指し示したことで、全員が顔を見合わせる。

一瞬の沈黙のあと、仲間の一人が押入れに近づき、天袋の襖に手を伸ばした。

そして襖を開く。

その瞬間、天袋の中から何かが床に転がり落ちた。

みんながそれを凝視する。



それは卒業証書を入れる筒だったらしい。


「ひっ」と誰かが小さく呻いたあと、堰を切ったように全員で部屋から逃げ出した。


誰の物かはわからない卒業証書。自殺した学生のものだったのだろうか。

転校生家族はいまだにその部屋に住んでるらしい。

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