ある冬の夜。

同級会で久しぶりに再会した元同級生の民俗学者が言っていた。

「特定の動物は、神様の化身として奉られている」と。

例えば、『蛇』。特に、『白蛇』。

時に白蛇は最高の霊力をその身に抱く縁起の良い存在であると伝承され、

脱皮し自らの身を棄てながら成長する御身から、再生の象徴とも言われている、と。

遥か太古の昔、日本と地続きであった中国の地では、蛇は小龍…龍の幼生と言われ、その長く伸びる体躯から、風水…運気を司るものとして崇められている程である、と。

そして、その民俗学者は最後に、こう言った。

「特に、腹の子卵を抱く白蛇は、その中でも最高の霊力を持つ聖なる存在、

…であるとともに、

遥かな過去から人の現世に仇なす、

祟 り の 化 身、でもあるのだよ」と。







そしてその夜。

俺は、白蛇を、踏み殺した。

だが、心から誓う。家族に。友に。

あれは偶然だったんだ、と。







夜の闇の黒と、降り積もった雪の白が街中にモノクロのコントラストを作っている。

その中年の男性は、夜道を急ぎ歩いていた。

冷たく身を切るような寒さが、若くはない体を襲う。

少しでも体の暖を保ったまま、早く家に着くために、男の足取りは速かった。

今年の雪は、…酷かった。

なんとか道の雪は除雪しているが、道路の端や建物の影には、雪掻きの結果出来た雪山が連なっている。

…明日に朝も寒そうだな。早く寝よう。

男性の歩く速度がさらに上がる。

その時。

男性の視界の端で、雪が動いた。

いや。よく見れば、白い何かの、直径30cm程の白い円柱が、動いてる。

その円柱に白さは、雪の白さとは異なり、

何か、ぬめり気のあるような、鈍い光を放っている。

…なんだあれは?

男は立ち止まり、さらに目を凝らす。

円柱の橋から端まで、視界を移す。

突然! 円柱の片方が、高く持ち上がった!

男性の身の丈を越す程の高さに!

その先で、円柱が裂ける! 真っ赤な中身が覗く。

いや。裂けたのではない。開いたのだ! 口を開いたのだ!

その真っ赤な口が、呆然とした男の頭上に被さる! 噛み付く! 呑まれる!

男はそのまま、その白い何かが紛れていた雪山に、引き摺り込まれた! 頭から!

男が今際の際に感じたのは、噛みつかれた痛みではなかった。

身動きの取れない自身の身体の熱を容赦無く奪う雪の

通常版で読む