これは数年前の話だ。
あの夏、私たちは毎晩のように心霊スポットに出掛けては、心霊写真を撮影する為に大量の写真を撮影していた。
ただの退屈しのぎだったと思う。
誰も本当に何かが写るなんて思ってもいなかったし、実際にそういうモノに出くわすなんて夢にも思わなかっただろう。
私も含めて…。
始まりは先輩からの電話だった。
「おい、今日はS病院行こうぜ」
S病院、県内では有名な心霊スポットで、私も知っているどころか何度か足を運んだことのある場所だった。
「おぉ、イイですね!最近つまんない所ばっかでしたからね〜!」
即決…電話から1時間後には先輩と友達を合わせて8人と合流し、車は先輩と私の2台で目的地へと向かうことになった。
目的地までは車で40分ほど。
若い男ばかり8人も集まれば、下品極まりない話で異常なまでにテンションは上がり、車の中は緊張感の欠片もないピクニック気分の一団と化していた。
しかし、その元気も長くは続かなかった。
目的地に到着。
手入れの行き届いていない敷地は人の背丈もあろうかという草が生い茂り、道も車の通れるような道ではないため、途中に車を停めて草むらを掻き分けて病院へと歩く。
病院の屋上らしきものが草むらの奥に見えた頃、辺りの空気が冷たくなるのを感じた。
恐らく、他のメンバーも同じだったと思う。
誰1人として道中の車内のように騒ぐものはいなかった。
そして病院の入口に辿り着くと、空気は重みを増して一段と冷たくなる。
何度か来たはずなのに、この場所が持つ異様な空気は慣れる事がない。
皆、言葉を忘れてしまったように黙りこんでしまっていた。
そう、この建物の前まで来ると決まって(帰りたい…)とだけ思うのだ。
しかし、その願いは叶わない。
「よっしゃ!入るぞ〜!!」
先輩に一声で皆の緊張が解ける。
「うおっ!怖ぇぇぇ!!」
「ビビんじゃねぇよ!!行くぞ行くぞ!!」
「美人ナースが待ってるぜ〜!!」
8人の男たちは、一斉に病院の中へと足を進めていった。
病院の中は外よりも酷い。
外より一段と暗い屋内をライトで照らすと、全てのガラスは割られ、壁には所狭しとスプレーで落書きがされている。
足元は瓦礫の山と化しており、夏場だからとサンダルなどで来ようものなら歩くこともままならない。
しかし、メンバーは全員何度か来たことがあるのか、皆しっかりとした靴を履いて