車で旅行に行った話。

僕にバイトを斡旋してくれた先輩と夏休み旅行に行った。

当時、念願のクルマを購入した僕はドライブに行きたくてしょうがなかった。

じゃあ俺の実家行くか?

そう言った先輩に僕は二つ返事で飛びついた。

道中は特に何もない。

ただ、移動距離が飛行機クラスだった。

夜の11時に出発して、着いたのが朝過ぎ。

もうアホかと。

 

先輩の家族はものすごく良い人たちだった。

先輩はきっと拾われた子なんだろう。

または遺伝子操作で生まれたんだろう。

受験生の妹もいた。

先輩の妹だけあって凄く可愛かった。

どうやら兄・先輩・妹の三兄弟らしい。

手を出したら殺す、と半ば本気で言われる。

先輩がシスコンとは意外でした、と言ったらみぞおちに蹴りをいただいた。

ナイスキック。

ここから本題だ。

状況はたったの二文字で表すことができる。

迷子、だ。

道に迷った。

事の発端は滞在二日目に先輩が、良い所教えてやるから行くぞ、と言ったことだ。

妹ちゃんともっとお話していたかった。

だが、僕が妹ちゃんにべったりなのでやきもちを妬いたのか。

先輩の気持ちは分からないが、僕を外に連れ出した。

囲炉裏のある温泉宿みたいなところに連れて行ってもらう。

そこで昼食の他に、蜂の子(?)と、ツグミ(?)を食べさせてもらった。

どちらも凄く珍しいものと聞いたのだが、グロテスクすぎて食べるのに勇気がいる。

思い出としては懐かしいが、今出されて食べる自信はない。

そこは先輩の古くからの知り合いの店だったようだ。

先輩のことを、タクちゃん、と親しげに呼んでいた。

温泉にも入り、囲炉裏でタバコを吸いながらまったりしていた。

先輩が、サトさん、と入ってきた人に声を掛ける。

「おお。お前久しぶりだな、こんな所に何の用だよ」

「サトさんご無沙汰です。今、後輩を連れて帰省中なんです」

「もっと顔出せよ、まあいいや。親父さん元気か?」

「元気ですよ。あ、コイツ後輩のマサシです」

「こんにちは。先輩にはいつもお世話になっています」

「嘘つけよ。お世話してんだろ?」

「……はい」

その後、サトさんを含めて三人で雑談。

サトさんは長身でスラリとしていて、声が太く、口が悪い人だった。

だが、凄く感じのいい人だ。

先輩が懐くのも分かる。

面倒見の良い渋いイケメンとでも言えばいいのだろう

通常版で読む