ある女がいた。
その女(A子)は男の子(K助)と二人で生活をしていた。
K助はA子の実の子供ではなかった。
A子には姉がいた。
K助は姉の子供だった。

姉が忽然と姿を消し、唯一の肉親だった妹であるA子が子供を引き取ることになる。
K助は目つきが鋭く、普段笑うことがなかった。
A子はK助を大事に育てた。
小さい頃に両親を亡くしたA子。
K助の気持ちは痛いほど分かる。
だからこそ母親である姉が戻るまで、いやA子自身が母親の代わりとしてK助を立派に育てようと決心していた。

A子とK助が二人で生活を始めて一年が経ち、K助も少しずつA子に心を開き始めた。
依然として姉の消息は掴めず、A子もK助と二人歩んでいく考えがより固まっていた。
そんなある日、K助がA子にポツリ、ポツリと姉がいなくなった日のことを話し始めた。

姉はK助と夫である男と3人で暮らしていた。
男は決して良い父親とは言えず、子供であるK助に事あるごとに暴力を振るった。
姉はそれを見るに見かね、ある日K助と二人で男の元から逃げる計画を立てた。

計画を決行する夜。
男が寝静まったのを見計らって、息を潜め姉とK助は家を出る。
家から少し離れてK助はある事に気付く。

大切にしていたオモチャを家に忘れて来た。

事もあろうにK助は、家にオモチャを取りに行きたいとせがみ出す。
やっと掴んだチャンス、今戻ったらまたあの生活に逆戻りだ。
もうこんなチャンスは無いかもしれない。
姉がいくら言い聞かせても、K助は家に戻ると聞かず、泣き始めた。
こんな夜中、近所の人に不審がられたら説明のしようがない。
警察を呼ばれたらそれこそ事だ。
姉は少しの間考え、K助には自分が家にオモチャを取りに行くと伝えた。
K助に、目立たない場所に身を隠すよう優しく話し、姉は家に戻った。

K助が姉を見たのは、それが最後だった。

K助は母親の言いつけ通り、目立たない場所で身を隠していた。
しかしいくら待っても母親は来ない。
やがて朝になり空が白んだ頃、K助は家に様子を見にいく事にした。
家の玄関の扉は少し開いていた。
家の中に入ると、


誰もいない、、、

家の様子は普段と変わりなかった。

リビングに血のついた包丁と、大量の血溜まりが出来ていたことを除いて。

K助はその日から数日間、父親と母親を待ち続けた。
数日後、以前から虐待の疑いがあるとして、定期的に自宅訪問を行なっていた児童相談所

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