知ってる?
地図に載っていないくらい小さな村では、ある決まりがあるんだ。

それは、【四月十二日】、ひとのすくいという日に、外に出てはいけない。また、村の外の者は村に立ち入ってはいけない。というもの。

これは村長に何度も言われていることで、新人でも絶対に守っていたそうだ。

そして【四月十二日】がやって来た。
村人は起きてから扉の鍵をしめ、覗き穴をふさいだ。
外に置いてある野菜やくわなんかも、前日にしまったから、村人は家の中で家族や友達とすごしていた。

でも1人の新人は外が気になったのかな。
ちょっとだけ覗いてみようって言って、ドアをほんの少し開けてみたんだ。

新人が開けたドアから覗くと、そこには村長がいたんだって。
そしたら村長が…

「おい。覗いているな?私も腹が減ったんだ。丁度いい。」

たしかに村長の声だった。
新人はうわぁ!と悲鳴をあげた。

次の瞬間、新人の家は村長に丸ごと飲み込まれた。
新人が悲鳴をあげる時間もないほど、一瞬の出来事だった。

そう。ひとのすくいの日とは、人を救うということでもない。人の巣食いという意味。
そして村の家がなくなったら、他の村に行ってまた人の巣食いを始めるそう。





え?なんでこのことを知ってるかって?






それはね。










「私が村長なんだよ…」

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